2009 Fiscal Year Annual Research Report
キスゲ属における夜咲き種の花の進化-その遺伝的基礎の解明と初期過程の野外実験
Project/Area Number |
07J10449
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
新田 梢 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 送粉シンドローム / 遺伝的基礎 / 夜咲き種 / キスゲ属 / 開花時間 / 花色 / アントシアニン色素 / カロテノイド色素 |
Research Abstract |
キスゲ属のハマカンゾウは昼咲き種で、赤色を帯びたオレンジ色の花冠を持ち、昼行性のアゲハ類によって送粉される。一方、近縁種のキスゲは夜咲き種で、薄いレモン色の花冠と甘い香りを持ち、夜行性のスズメガ類によって送粉される。本研究は、送粉昆虫に適応した-連の花形質群の進化機構を解明することを目的とし、特に、平成21年度は親種・F1・F2雑種を用い、特に2種間で違いが顕著な形質である開花時間と花色の遺伝的構造について調べ、主要な遺伝子座の変化による適応的進化を示唆する研究をまとめた。 F2の開花時刻は朝と夕方に集中し、二峰型分布を示した。朝と夕方の比率は1:1からずれてはいなかった。閉花時刻については、夕方と朝の比率は3:1からずれてはいなかった。開花時刻が主要には1個の遺伝子によって制御されていることが示唆された。一方、閉花は、開花時刻を制御する主要遺伝子とは別の主要遺伝子によって制御されていると考えられる。以上の成果は、日本時間生物学会誌とAmerican Journal of Botany誌に掲載され、国際的にも高く評価されている。 キスゲの花弁にはアントシアニンは無かった。F2では、アントシアニン色素量の変異があり、無:微量:淡赤:濃赤=61:33:20:10であった。よって、少なくとも2遺伝子座支配による可能性が考えられた。カロテノイド色素についてはF1は中間色であった。F2では、オレンジ色・中間色・レモン色に分離し、中間色が多かった。よって、主要な遺伝子座の関与が示唆され、ヘテロ接合で中間色になったと考えられる。また、アントシアニン色素とカロテノイド色素の合成系の酵素遺伝子について、RT-PCRで花弁における発現を比較したところ、キスゲではいくつかの酵素遺伝子の発現量が減少していた。以上の成果は、第73回日本植物学会・第41回種生物シンポジウム・第57回日本生態学会にて発表し、第57回日本生態学会ではポスター賞を受賞した。
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