2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J10458
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
生住 昌大 Kyushu University, 大学院・比較社会文化研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 明治 / 実録 / 士族反乱 / 新聞 / メディア |
Research Abstract |
最終年にあたる20年度もまた、着実に研究を積み重ねることができたと自負している。「研究実施計画」として、以下の3つの課題をもって、研究に臨んだ。 1、実録「士族反乱物」資料データベースの作成(2年間の通年計画) 2、「士族反乱物」翻字資料の作成(2年間の通年計画) 3、「士族反乱物」から見た「歴史の語り」と大衆の「歴史認識」の解明の研究 1については、いくつかの既成の資料一覧を参考としながら、さらに書誌情報を充実させ、情報に誤りがある場合は訂正し、また調査によって得られた新資料も盛り込んだ、新たなデータベースを作成した。資料の数は百に迫り、「士族反乱物」の全体像を浮かび上がらせるデータベースとすることができた。 2については、その成果の一端を、論文「『熊本戦争記』について」としてまとめた。百に迫る数の資料群のなかから、まずは性格が異なる資料(記事風/絵双紙風)をそれぞれ選び、計画的に翻字資料を作成することができた。 3については、「士族反乱物」の「歴史(「士族反乱」)の語り」が極めて政治的であることを、典拠となった新聞記事と比較して明らかにし、戦争報道によって国民国家形成の一端を担ってきたとされる新聞メディアに加え、通俗的読み物である「士族反乱物」も視野に入れて研究を進めるべきことを、発表「プロパガンダとしての「士族反乱実録」」を通して、問題提起した。ただし、「士族反乱物」の政治性を帯びた文章は、編者の主義主張として見るのではなく、当時の事後検閲を考慮して、仮の衣裳をまとったに過ぎないもの、と考えるのが妥当である。しかしながら、読者の手元には、新聞記事から「賊徒」弁護の声を完全に抹殺しか「士族反乱物」が届けられるのであり、こと「士族反乱」に関して言えば、「士族反乱物」が国民国家の形成に果しか役割は、新聞と同様、あるいは、なおそれ以上に大きかったことが想像されるのである。
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Research Products
(2 results)