2007 Fiscal Year Annual Research Report
アルキンπ錯体-ビニリデン錯体間の平衡制御を基盤とする触媒的炭素骨格構築法の開発
Project/Area Number |
07J10476
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鬼澤 裕二 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アルキンπ錯体 / ビニリデン錯体 / 平衡制御 / タングステン触媒 / シロキシジエン / アミン / 含窒素二環性化合物 / 選択的合成 |
Research Abstract |
末端アルキン類と遷移金属錯体の作用により生じるアルキンπ錯体、及びここから平衡的に生じるビニリデン錯体は、合成化学的に有用な反応活性種である。一方、このアルキンπ錯体とビニリデン錯体間の平衡を自在に制御することができれば、これら二つの活性種をより有効に利用できると考えられるが、そのような試みはこれまでほとんど行われていない。筆者は、この平衡を添加剤により自在に制御する手法の開発、ならびにその手法を基盤とする、両活性種を利用した有用な触媒的炭素骨格形成反応の開発を目的に研究を行った。 末端アルキン部位を有する5-アザ-3-シロキシ-1,3-ジエン-7-イン類に対し、触媒量のW(CO)_6を光照射条件下作用させたところ、アルキンπ錯体を経由して連続環化反応が進行し、2-アザビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体が得られた。一方、同様の反応をトリブチルアミン共存下で行うと、ビニリデン錯体を経由し、環化一骨格転位が進行した3-アザビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体が選択的に得られた。この結果は、タングステン触媒による末端アルキン化合物の反応において、アミンの有無により、アルキンπ錯体経由の反応とビニリデン錯体経由の反応が制御できるという、これまでほとんど例のない非常に興味深い反応である。また本反応は、様々な置換基を有する基質に対して、トリブチルアミンの有無により二つの化合物を一般性良く作り分けることができ、合成化学的に有用な含窒素二環性化合物を、わずかな反応条件の違いにより選択的に合成できるという点も特筆すべき点である。 以上、添加剤としてアミンを用いることで、目的のアルキンπ錯体-ビニリデン錯体間の平衡制御に成功し、それぞれの活性種を利用した有用な炭素骨格の選択的合成に成功した。
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Research Products
(2 results)