2008 Fiscal Year Annual Research Report
アルキンπ錯体-ビニリデン錯体間の平衡制御を基盤とする触媒的炭素骨格構築法の開発
Project/Area Number |
07J10476
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鬼澤 裕二 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アルキンπ錯体 / ビニリデン錯体 / 平衡制御 / タングステン触媒 / シロキシジエン / 含窒素二環性化合物 / ビシクロ[5.3.0]デカン誘導体 |
Research Abstract |
末端アルキン類と遷移金属錯体の作用により生じるアルキンπ錯体、及びここから平衡的に生じるビニリデン錯体は、合成化学的に有用な反応活性種である。筆者は前年度、この平衡を添加剤により自在に制御する手法の開発、ならびにその手法を基盤とする触媒的炭素骨格形成反応の開発を目的に研究を行い、5-アザ-3-シロキシオクタ-1,3-ジエン-7-イン類を用いたタングステン触媒による連続環化反応において、トリブチルアミンの有無により、アルキンπ錯体を活性種とする反応とビニリデン錯体を活性種とする反応の反応経路の制御に成功し、合成化学的に有用な含窒素二環性化合物の選択的合成を達成した。本年度は、さらなる基質一般性の検討と反応機構に関する実験的考察を行ったところ、本反応が幅広い基質に適用可能である合成化学的に有用な反応であること、並びに、多段階の骨格転位を経由するユニークな反応機構で進行するという、反応化学的な見地からも興味深い反応であることを明らかとした。 また、アルキンπ錯体を活性種とする有用な反応の開発にも取り組み、3-シロキシデカ-1,3,9-トリエン-7-イン類を基質として用い、タングステン触媒による連続環化により、合成中間体として非常に有用なビシクロ[5.3.0]デカン誘導体を効率良く合成することに成功した。本反応は幅広い基質に適用可能であり、様々な置換基を有するビシクロ[5.3.0]デカン誘導体を高収率、かつ高立体選択的に合成できる。さらにこの反応は、基質のシリルエノールエーテル部位とエンイン部位の幾何配置を変えるだけで、生成物の立体化学を自在に制御できるという非常に優れた炭素骨格構築法である。 以上、タンスグテン触媒の持つ特徴を巧みに利用した、アルキンπ錯体、並びにビニリデン錯体を活性種とする有用な触媒的炭素骨格形成反応の開発に成功した。
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Research Products
(2 results)