2007 Fiscal Year Annual Research Report
皮質-視床下核(ハイパー直接路)が運動の制御において果たす機能の解明
Project/Area Number |
07J10515
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
纐纈 大輔 Kyoto University, 霊長類研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 運動制御 / 視床下核 / 淡蒼球 / 大脳基底核 / 細胞活動記録 |
Research Abstract |
マウスの運動皮質→Stn投射を選択的に破壊することで大脳基底核内の「ハイパー直接路」だけを遮断し、生理学的、行動学的なレベルでの変化を調べた。逆行性輸送物質であるビーズを光活性物質であるクロリンを化学的に結合したものをStnに注入し、軸索末端で取り込まれたビーズークロリンが細胞体まで十分に輸送された後に運動皮質にレーザーを照射して運動皮質→Stnニューロンを選択的に破壊した。そしてこの運動皮質→Stn投射を破壊したマウスのGPeで皮質電気刺激に対する細胞活動を記録した。正常なマウスのGPeは皮質刺激に対して早い興奮-抑制-遅い興奮の三相性の反応を示す。しかし皮質→Stn破壊マウスでは早い興奮だけが抑えられた。これは皮質からStnへ直接投射している興奮性の入力が無くなったために生じたと考えられ、実際にStnで記録すると運動皮質→Stn投射由来の早いタイミングで起こる興奮反応も低減していた。以上の生理学的の実験結果は、GPとSNrで見られる早い興奮が「ハイパー直接路」由来だとするこれまでのデータと一致した。更に運動皮質→Stn破壊マウスの運動量の測定を行った。その結果、皮質→Stn破壊マウスでは正常マウスに比べて運動量が増加していた。これは皮質→Stn投射を破壊したことでまず大脳基底核の出力部であるGPiの活動が弱まり、GPiから視床への抑制性の出力の程度が小さくなり、視床の活動が強くなったと考えられ。続いて視床から皮質への興奮性の出力が大きくなり、結果として運動皮質の活動を増強することによるものと考えられる。これは細胞活動のデータとも一致する。以上のように、本研究により「ハイパー直接路」が運動皮質の不必要なニューロン活動を抑制する機能を持つことが明らかになった。
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Research Products
(1 results)