2007 Fiscal Year Annual Research Report
帰納的推論過程の数理モデルの構成-言語データの統計解析を用いて-
Project/Area Number |
07J10560
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂本 佳陽 Tokyo Institute of Technology, 大学院・社会理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 帰納的推論 / リスク / 人格 / 計算モデル |
Research Abstract |
研究1.リスク状況下における帰納的推論のメカニズムを、心理実験と計算モデルのシミュレーションによって検討した。心理実験の結果から、人は帰納的推論における同じargumentに対し、リスク回避の方向に応じて異なる評定をすることが確認された。これに対し、帰納的推論のカーネル関数モデルが提案された。モデルは帰納的推論における結論のもっともらしさの評定を2つの類似性関数、すなわち正事例と結論との類似性関数と負事例と結論との類似性関数に基づき説明する。そしてそれらの類似性関数のパラメータを用いて、モデルが出力するもっともらしさ評定における2つの類似性の「強度バランス」が表現される。さらに、この強度バランスの違いに基づき、異なる状況によって帰納的推論の評定が異なるという現象を説明する。この提案されたモデルのシミュレーションの結果、モデルの仮定どおり、異なるリスク条件による実験結果を、推定されたパラメータの違いからうまく再現することができた。これに基づき、その類似性はリスク回避の方向に応じ、正事例の対象からの距離か、負事例の対象からの距離のいずれかが強調されることにより、調整されるというメカニズムが提案された。 研究2.モデル上で表現される強度バランスが、帰納的推論評定における状況と評定者の人格との相互作用をも説明しうるという更なる可能性を追求した。今回は特に、心理実験結果のモデル表現に基づき、神経症傾向の強い評定者は状況による影響を受けないこと、外向性傾向の強い評定者は状況に関わらず負事例と結論との類似性を重視することが明らかになった。
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