2007 Fiscal Year Annual Research Report
下部マントル全領域における構成鉱物中の鉄含有量と価数決定
Project/Area Number |
07J10682
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
新名 良介 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 下部マントル / D"層 / ダイヤモンドアンビルセル / 透過型電子顕微鏡 / 電子エネルギー損失分光法 |
Research Abstract |
(1)本計画の主目的である「下部マントル全領域における構成鉱物中の鉄含有量と価数決定」に関する実験を進め、成果を国際誌(査読あり)に2本論文を投稿した。地球下部マントルは、およそ10%弱の鉄を含んでいる。その鉄が「どの鉱物相にどれだけ含まれるのか」、「どの程度Fe2+として存在し、どの程度Fe3+として存在するのか」は、下部マントル全体の物性やダイナミクスを議論する上で重要な情報である。特に下部マントル最下部は外核と活発な反応を起こしていると考えられている。そのため、マントル最下部の主要構成鉱物であるポストペロブスカイト相が含む鉄の量と価数状態は、地球全体の物理、化学プロセスを議論する上で鍵となる情報である。しかし、下部マントル全領域に相当する圧力範囲で各鉱物に含まれる鉄の量と、それぞれに含まれるFe2+とFe3+の割合を決定した研究はいまだ存在しない。本年度投稿を済ませた論文では、やや単純化された系ではあるが、マントル全圧力領域に相当する圧力範囲で鉄の含有量と、Fe2+とFe3+の含まれる割合を実験的に決定した。結果、鉄はマイナー相であるフェロペリクレースにそのほとんどが含まれること、ペワブスカイト、ポストペロブスカイト中の鉄はほとんどがFe2+であることが示された。さらに、過去の成果との比較から、マントルに5%程度含まれるアルミニウムが鉄の挙動に大きな影響を与えていることが示唆された。 (2)本計画のために身につけた技術を応用した共同研究を行った。その成果はサイエンス誌に投稿、受理された。前述の通り、下部マントル構成鉱物の物性は、鉄の含有量と価数状態に大きく左右される。その中の二つが電気伝導度である。鉱物の電気伝導度測定を行っている他の研究者と共同研究を行い、ある一定のFe3+を含むポストペロブスカイトが、従来考えられていたよりも非常に高い電気伝導度をもつことを発見した。
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[Journal Article] The electrical conductivity of post-perovskite in Earth's D"layer2008
Author(s)
Ohta, K., Onoda, S., Hirose, K., Sinmyo, R., Shimizu, K., Sata, N., Ohishi, Y., Yasuhara, A.
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Journal Title
Peer Reviewed
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