Research Abstract |
(1)クラスターモデルを用いたDFT計算によって各ゼオライトの酸点上のアンモニア吸着エネルギーを評価した結果,アンモニアIRMS-TPD測定で得られた実測値と整合性の取れた計算値が得られた.有限系の計算から得られたこの知見は,ゼオライトの酸点強度が局所構造に大きく依存している可能性を示唆している. (2)骨格中のT原子(T=Si or A1)が全て等価であり,非等価なO原子を4種類しか有さないチャバサイト(CHA)の固体酸性質を,アンモニアIRMS-TPD法と周期境界条件を取り入れたDFT計算によって評価した.その結果,CHA構造中の非等価なO原子に由来する4種類のOH基のIRバンドが観測され,各OH基の個々に定量されたアンモニア吸着熱とそれらに対応する計算値がほぼ一致した.アンモニアIRMS-TPD測定とDFT計算の併用は,酸性質解析において非常に有効な方法論であり,ゼオライト酸性質の理解に大きく寄与すると考えられる. (3)より大きな分子が関与する触媒反応において,その利用が期待されるメソ孔を有するZSM-5ゼオライト(mesoporous ZSM-5)の酸性質を,触媒反応との対応も含めて測定,検討した.n-オクタンのクラッキングにおいて,mesoporous ZSM-5の触媒活性は,従来のZSM-5よりは低いが,代表的なメソポーラスシリカであるMCM-41にA1を含有させたA1-MCM-41よりも高かった.この結果は,メソ細孔内に触媒作用に有効なZSM-5構造に由来する酸点が存在しているということを示している.また,mesoporous ZSM-5の広い酸強度分布は,構造の欠損部位に位置する水酸基(Si-OH,A1-OH)に由来すると,計算化学的検討も含めて考察した.
|