2008 Fiscal Year Annual Research Report
富栄養化に伴う内湾生態系人為改変史の解明:有孔虫の長期時空記録からのアプローチ
Project/Area Number |
07J10896
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
辻本 彰 Osaka City University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 底生有孔虫 / 富栄養化 / 閉鎖性海域 / 生物多様性 / 貧酸素 / 生態系 / 汚染 / 環境保全 |
Research Abstract |
平成20年度中に2編の論文(辻本ほか,2008,第四紀研究.Tsujimoto et al.,2008,Marine Micropaleontology)が学術雑誌に掲載された.辻本ほか(2008)では,大阪湾の現生底生有孔虫の分布傾向を,底質中の全有機炭素・全窒素・全硫黄濃度と比較検討し,Sen Gupta et al.(1996)によって提唱されているA-E index(Ammonia parkinsonianaとElphidiumとの比)をもとに,富栄養・貧酸素環境の指標(Elphidium spp.とAmmonia beccariiの比:Ab-Espp indexと命名)を抽出した.この値は湾奥部のような富栄養・貧酸素な環境下で高くなる.そこで,Tsujimoto et al.(2006)で報告されている大阪湾奥部の柱状堆積物(OBYコア)中に認められる底生有孔虫化石群集のAb-Espp indexを調べ,公表済みの底生有孔虫記録(Tsujimoto et al.,2006)との比較を行ったところ,Ab-Espp indexは過去150年間の大阪湾の後背地の人間活動と非常に調和的な変化を示すことが明らかとなった. Tsujimoto et al.(2008)では,大阪湾奥部から中央部にかけて掘削された4本の柱状試料の有孔虫群集組成変化を明らかにし,富栄養化した閉鎖性海域に卓越する高密度低多様性底生生態系の発達過程を解明した.その結果,かつての大阪湾に存在していた高多様性群集は1900年代初頭以降湾奥部を中心に好汚濁種を主要種とする群集へと移り変わったことが明らかとなった.底層水の貧酸素が頻繁に発生した1960〜1970年代には高密度低多様性群集は湾広域に発達した.1970年代以降好汚濁種の密度は減少しており,これは1970年代以降の栄養塩類排出規制の結果であると考えられる.
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Research Products
(10 results)