2008 Fiscal Year Annual Research Report
中国における再生産労働の政治と女性の主体位置-北京・西安の家政サービスを事例に
Project/Area Number |
07J10982
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
大橋 史恵 Ochanomizu University, 大学院・人間文化研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 中国 / 家政サービス / 家事労働者 / 再生産労働 / 婦女聯合会 / 開発政策 / ジェンダー体制 |
Research Abstract |
2008年度は、前年度においておこなった家事労慟者の職業訓練についての検討をふまえ、都市の仲介業者および政府・共産党組織について、また農村-都市間の移動や職業訓練のプロセスを経験する女性主体、および彼女たちのエンパワーメントを支援するNGOや労働組合(工会)について分析をおこなった。さらに北京における家事労働者の需要の歴史的変遷について詳細な把握を試みた。研究実施状況をテーマ別に示すと以下のようになる。 (1)女性の経験:前年度のインタビュー記録をもとに、家事労働者たちの経験を整理した。またNGO「打工妹之家」(北京)や家政工工会(成案)における彼女たちの集合的実践についても考察をおこなった。(2)仲介業者の実践:前年度のインタビュー記録をもとに、再生産労働力の等級化をめぐる言説を整理した。(3)北京市における再生産労働の分業秩序の変遷とその政策的背景についての考察:全国婦女聯の機関紙『中国婦女報』のバックナンバーを入手し、北京市において家事労働者の仲介事業がどのようにはじまったのか、またその背景としての市場経済化のなかで、国務院および共産党中央が女性労働をどのようにとらえていたのかを整理した。(4)開発政策と全国婦女聯の関係についての考察:農村女性を対象とした開発政策において、婦女聯がどのような利害関心を持ってきたかを検討した。 以上(1)〜(4)の課題を通じ、女性主体が家事労働者になるというプロセスと、改革・開放以来の中国の政治・経済構造の転換との結びつきを多角的にとらえた。女性労働の変化について考察するにとどまらず、農村-都市関係や産業構造の転換とジェンダー分業の連関をポリティクスとして読み解き、ジェンダー研究と中国地域研究の双方に新しい視点を提示することができたと考える。
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Research Products
(3 results)