2008 Fiscal Year Annual Research Report
カンボジア古典舞踊教育の研究:開発コンテストにおけるクメール性再生の視点から
Project/Area Number |
07J11110
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
羽谷 沙織 Nagoya University, 大学院・教育発達科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | カンボジア / 古典舞踊 / クメール性 / 観光開発 / 女性舞踊家 / 教育開発 |
Research Abstract |
カンボジア古典舞踊は観光資源として近年、注目を集めている。折しも2003年10月、古典舞踊はユネスコ無形文化遺産に登録され、政府側でもその振興方策を公式に打ち出すに至った。振興政策は、観光化に向けてクメール文化の質を向上させることをねらいとしているが、これはただ単に外国人観光客の間で人気を高め、商品として高く売れるよう、クメール文化を客体化(Objectification)し、観光資源として有効活用することだけを意味しているのではない。クメール文化の質を高めるという課題に取り組む好機ととらえ、古典舞踊に内包され、その上演を通して表現され明示されるクメール文化に政府は着目する。古典舞踊の振興は、国民のクメール文化、すなわち国民の大多数を占めるクメール民族が共有すべき性質としての「クメール」なるものをいかに再生するのかという課題と密接に関係している。 観光開発というコンテクストにおける現在の古典舞踊は、観光客の娯楽的なニーズにこたえるものであり、その踊り手と質は確かにかつての古典舞踊のそれとは異なってきている。しかし、それは古典舞踊からクメールらしさが剥がれ落ち、もっぱら商業的な見せる芸能に変化したという意味ではない。カンボジアは観光開発という枠組みを利用しながら、古典舞踊を通してクメールらしさ、すなわち「クメール性」を保とうとしている。それはグローバリゼーションの圧力のもと、主体的な国家発展を遂げていこうとするカンボジアの戦略の一つともいえる。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article]2009
Author(s)
羽谷沙織, 西野節男編著
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Journal Title
第1章「カンボジアの教育制度」、第5章「開発下カンボジアにおける古典舞踊と自文化をめぐる教育」、第9章「カンボジアにおける外国人学校・国際学校-外国人学校における国民の就学と国民向け国際学校の増殖」『現代カンボジア教育の諸相』(東洋大学アジア文化研究所・アジア地域研究センター)
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[Journal Article]2008
Author(s)
羽谷沙織, 廣里恭史, 北村友人編
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Journal Title
第4章「国際援助機関のEFA達成をめぐる戦略とポリティクス」『途上国における基礎教育支援(下)』(学文社)
Pages: 109-120
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