Research Abstract |
本研究では高品質なミニブタ体細胞クローン胚を作製し、その胚よりGFP遺伝子導入した多能性胚性幹細胞を樹立するとともに、作出したクローン個体にその樹立した細胞を移植することで自家細胞由来胚性幹細胞移植モデルミニブタの開発を目的としている。研究初年度は,効率的に体細胞クローン胚由来胚性幹細胞を樹立するために,高品質なミニブタ体細胞クローン胚盤胞期胚を作製することを目的とした。1)体外発生培地の改良において,ブタ体外発生培地として一般的に使用されているNCSU-23を用いた場合に比べ,ブタ卵管液の組成を基に作成した体外発生培地であるPZM-3を用いることで胚盤胞形成率,発生速度,および細胞数が改善されることを明らかにした。2)続いて,更なる,発生培養条件の改善を目指し,ミニブタ体細胞クローン胚の代謝的特長を明らかにすることを目的とし,ミニブタ体細胞クローン胚のミトコンドリア機能に関して研究を行った。結果,ミニブタ体細胞クローン胚盤胞期胚は,体外受精(IVF)胚に比べ酸素消費が低レベルにあることが明らかになった。3)そこで,この低レベルな酸素消費がミトコンドリア機能に起因するか否かを解析したところ,ミニブタ体細胞クローン胚では,ミトコンドリアの電子伝達系を介した酸化的リン酸化能がIVF胚に比べ低下していることが明らかになった。一方,このミトコンドリア機能の低下に伴い,ミニブタ体細胞クローン胚では解糖系の機能が亢進し,グルコースの取り込みが増加していることを明らかにした。4)これらの知見から,ミニブタ体細胞クローン胚盤胞期胚の品質改善には解糖系を効果的に利用した培養系が必要であると考え,桑実期胚からの発生培地中の最適グルコース濃度の決定を行った。結果,ミニブタ体細胞クローン胚において桑実期胚からの発生培地に1.5mMのグルコースを添加することで細胞数が改善され,高品質なミニブタ体細胞クローン胚盤胞期胚の作製が可能になった。
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