2008 Fiscal Year Annual Research Report
事象関連電位を指標とした言語要素間の関連付けに関する普遍的な言語処理モデルの構築
Project/Area Number |
07J11280
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安永 大地 Kyushu University, 大学院・人文科学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 言語学 / 心理言語学 / 日本語 / 文処理 / 文理解 / 事象関連電位 / 依存関係 / 格助詞 |
Research Abstract |
文の意味は、文に含まれる各語の意味の組み合わせることによって成立する。そして、人間は入力される語と語の関係を高速で計算し、意味を組み合わせる操作を行っていると考えられる。本研究では、まず、人間が文の意味を理解するために必要な関係というのが文の主述関係と要素間の修飾関係のみであると提案した。そして、これらの関係を標示するための処理のことを「関連付け処理」と呼んだ。本研究では、関連付け処理がどのように展開されるのかという問題について取り組んでいる。ある言語要素が入力されると、(1)関連付け処理を開始し、(2)関連付けの相手となる要素が入力されるまで要素を保持し、(3)関連付けが行える状態になったら即座に2つの要素を関連付けるという3種類の過程を経て関連付け処理が終了するということが示されている 本年度は関連付け処理過程の「(1)関連付け処理の開始」の時点において、言語の形態論的な情報がどのような影響を与えているのかという点に関する研究を行った。日本語には豊富な種類の助詞があり、それらの情報を利用して文処理が進められていることはこれまでにも明らかにされていたが、個々の助詞がそれぞれどのような影響を及ぼしているのかについては明らかでなかった。 事象関連電位を用いた実験を行った結果、(i)名詞句に付された格助詞の違い、およびその入力される順序の違いによって文末に入力される動詞の種類に関して予測の内容が異なる。(ii)接続助詞の有無によって後続する要素に対する予測内容が異なるという2点が明らかになった。日本語は言語要素間の関係を決定する要素が後から出現するという特徴があるために文末まで要素間の関係を決定するのが困難な言語であるといえる。その中で、文末まで処理を保留しているのではなく、名詞句に付された助詞の種類や有無の情報を利用して処理を進めており、さらには、後続する要素の予測内容が異なるということを明らかにした。
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Research Products
(3 results)