2007 Fiscal Year Annual Research Report
「個の尊重」の教育原理-エマソン教育思想の現代的意義-
Project/Area Number |
07J11308
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
苫野 一徳 Waseda University, 教育・総合科学学術院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | エマソン / ニーチェ / 現象学 / デューイ / 個の尊重 / 教育学のアポリア / 構造構成主義 |
Research Abstract |
本研究には2つの目的があった。1つは、「個の尊重」の教育思想を最も初期に唱えながら、教育学的にも哲学的にも、これまでその重要性があまり注目されてこなかったエマソンの思想を、現代に蘇らせしかも現代教育哲学の原理として鍛え直すことにある。2つは、その上で、未だその内実が明らかにされず、哲学的にも教育(学)的にもその意味において一般的合意に達していない「個の尊重」の教育原理を明らかにすることである。 1つめに関して、報告者は、あまりにロマン主義・形而上学的こ過ぎるとしてかえりみられてこなかったエマソンの超越主義を、エマソンから多大な影響を受けたニーチェの思想によって克服し、さらにエマソンの現象学的先駆性に着目することで、彼の認識論を現象学によって基礎づけた。これによってエマソンの思想が現代思想の先駆けであったことを明らかにするとともに、彼の唱えた「個の尊重」の教育原理を、哲学的に基礎づける視座を提示した。 すなわち、2つめの目的を、報告者は、「個の尊重」とはあくまでも「個」が認識の最終基盤であるという点、および、「個」は条件が整えば共通了解を志向する可能性をもっている点を明らかにすることによって基礎づけた。 申請者は続いて、そうは言っても「個」とはかかわりのない一般知識の獲得もまた重要であるという考えとの対立を解消するため、この対立を解消ずることを試みたデューイの思想に着目した。その過程で、デューイの教育哲学がいまだ不徹底であることを明らかにし、これをまずは現象学的に再構築することで上記問題を解消した。 最終的には、申請者は上記研究過程において、教育(学)の根本問題が相対主義、理想・当為主義、規範主義の3つの思想的立場の対立にあることを見出し、これを現象学=構造構成主義によって解消するという成果を得た。今後あらゆる教育問題を解明していくための基本的視座を提示した重要性をもつといえる。
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Research Products
(6 results)