2007 Fiscal Year Annual Research Report
13-15世紀トスカーナにおける紛争と紛争決-コムーネの司法と社会的実践-
Project/Area Number |
07J11501
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中谷 惣 Osaka City University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | イタリア / トスカーナ / コムーネ / 自治都市 / 司法 / 紛争解決 |
Research Abstract |
4月から9月までイタリアにおいて研究を遂行した。13-15世紀のトスカーナにおける紛争と紛争解決という課題を国際的な水準に高めるために、現地研究者との意見交換により理論的視座を発展させつつ、文書館において未刊行史料を分析した。ルッカ国立文書館では14世紀の裁判記録、公証人文書、都市条例などを分析した。特に、裁判記録に関しては約5000ページ分を読み込んだ。ルッカの事例を比較検討するために、ペルージャ、シェナ、マルセイュ(フランス)等の文書館にも赴き、史料の収集、閲覧、読解を行った。こうした史料分析は随時、フィレンツェ大学のゾルジ教授に報告し研究の方向性を発展させた。また同分野の第一人者でもあるトリノ大学のヴァレラーニ教授にも成果を報告し意見交換を行った。 9月末の帰国後は海外での調査の成果を以下の2点にまとめ、研究会で公表した。 第一に、14世紀ルッカの裁判の全体像を明らかにし、そこから人々によるコムーネの司法の利用のあり方を解明した。裁判記録の分析の結果、紛争当事者は13世紀に組織化される司法制度を戦略的に利用し、独自の司法実践を作り上げていたこと、そしてそうした実践は、翻って、コムーネの諸制度を存立させる効果も持っていたことが明らかになった。 第二に、裁判で人々が何を拠り所として土地などの権利を主張していたのか、その中でコムーネはどのように認識されていたのかを考察した。その結果、裁判では証書に基づく観念的な権利が一応は尊重されつつも、それを補強するために公開的な占有の実践が重視されていたこと。そして、コムーネは判決によって権利を完全に確定することではなく、司法命令により占有を暫定的にでももたらすことを期待されて利用されていたことが明らかになった。
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