2008 Fiscal Year Annual Research Report
貧困空間の人類学:下からの民族誌記述と知のリハビリテーションに向けて
Project/Area Number |
07J11540
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
内藤 順子 Japan Women's University, 人間社会学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 貧困空間 / 「下から」の民族誌記述 / トランスローカル / 「つながらない連帯」 / 専門知 / 社会的リハビリテーション |
Research Abstract |
今年度は本研究課題にかんして昨年度までにある程度「貧困空間」のイメージと視点の有効性が練られてきたことをうけて、「下からの民族誌」記述を実践し、具体的にはアルピジェラというフォーク・アート(民芸品)に注目した。それは今から30年ほど前のチリ軍政時代にスラムで生み出されたものなのだが、時代を下るごとにさまざまな意味が付与され、現在まで家庭内手工業的にスラムの女性たちの稼ぎの手立てとして存続してきた。「貧困空間」においてここ数年ではじめられたのが、それらのネット通販とフェア・トレードである。すると、もともとチリ独自のそのフォーク・アートは国境を越えて、隣国ペルーの貧困女性の家庭内手工業としても地位を確立して「アンデス民芸品」として売り出されはじめた。それらはチリのものよりも残念ながら質が良い。この現象を「下から」=それぞれの背景(文脈)から考えてみると、「トランスローカル」ともいうべき、その場の事情によって、「つながらない連帯」ともいえるような関係性を見て取れる。こうした一連の事実と仕組みを民族誌記述することを通して、いまひとつの課題として目指す、概念と知の自明化(たとえば民芸品、フェア・トレード、フェアとはなにをもってフェアなのか等)の改革をもあわせて行うこととなった。 以上の現地調査資料とその分析、課題についての文献県境の成果発表は、主として学会発表(2006年6月、日本文化人類学会第34号研究大会)および研究会(現代社会人類学研究会、九州・沖縄地区講談会オータムセミナー)において実施した。また、博士論文に着々と取り組む傍ら、共編著「境界の今を生きる」ほか論文3本を執筆した。
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Research Products
(8 results)