2009 Fiscal Year Annual Research Report
貧困空間の人類学:下からの民族誌記述と知のリハビリテーションに向けて
Project/Area Number |
07J11540
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
内藤 順子 Japan Women's University, 人間社会学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 貧困空間 / 「下から」の民族誌記述 / トランスローカル / 知のリハビリテーション / 「周辺の内側」からの視点 |
Research Abstract |
本研究では、1.貧困現象とはなにかを問い直すこと:「下からの民族誌」記述および「貧困空間」という視点の導入、2.自明化した概念・知とその自明化を支える構造の改革、を課題としている。 本年度はこれまで2年間の調査および分析に基づき、貧困空間の「トランスナショナル・トランスローカル」状況の検証を行った。具体的には、サンチャゴ市の貧困者のフェア・トレードをめぐるグローバルな現象(ネット売買、国境を超えた"「顔の見えない」関係性)と、複数の文脈を生きる・さまざまな他者の価値観のあいだを生きる個人の具体的な生の現場を調査し、「トランスローカル」という概念提出にむけての事例の例証を試みた。 これらの例証をうけて、これまで自明化した概念のとらえかたをめぐる問題群の指摘と解決の道筋を「知のリハビリテーション」と題しつつ、理論的な側面の考察を含めた博士論文がまもなく完成する。そして、以上の研究をすすめるなかで、あらたな課題--情報技術によって国境を超えた広がりをもちはじめた貧困問題(その意味でいう「貧困の世界化」)、また、チリから旧宗主国であるスペインへ移民した人びと(とそこからチリにもたらされる「資源」)を「貧困空間」へどう組み込むかという2つの問題にぶつかった。国境つまりナショナルな問題をこえて「貧困空間」の有効性をさらに拡大しうるこの問題群の発見は、本年度の大きな成果であった。 なお、研究実施計画時には、チリでのフィールドワークを予定していたが、当時、現地での新型インフルエンザの流行による渡航自粛のため、スペインのチリ移民調査に変更した。
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Research Products
(3 results)