2009 Fiscal Year Annual Research Report
mRNA品質管理に関わるタンパク質リン酸化酵素SMG-1の活性制御機構の解明
Project/Area Number |
07J11603
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
泉 奈津子 Yokohama City University, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | NMD / SMG-1 / PIKK / リン酸化 / mRNA分解 |
Research Abstract |
本年度はSMG-1結合タンパク質として同定したRUVBL1、RUVBL2とSMG-1の関わりについて解析を行った。RUVBL1、RUVBL2は進化的に保存されたATPaseであり、転写、テロメア維持、RNA修飾をはじめ多様な細胞機能に関与する。当初RUVBL1、RUVBL2をSMG-1の結合タンパク質として同定したが、その後の解析からRUVBL1、RUVBL2はSMG-1だけではなく、SMG-1の属するPIKK(Phosphoinositide3-kinase related kinase)ファミリーの全てのタンパク質と相互作用すること、さらに全てのPIKKの量を制御していることが明らかとなった。RUVBL1、RUVBL2の機能阻害は全PIKKタンパク質の減少を引き起こし、PIKK下流のリン酸化シグナルを抑制する。またRUVBL1、RUVBL2によるPIKK量の制御には少なくともmRNAレベルでの制御が介在していること、RUVBL1、RUVBL2のATPase活性が必要であることも明らかにした。 さらにRUVBL1、RUVBL2とSMG-1に着目した解析から、RUVBL1、RUVBL2がSMG-1の量の制御とは独立にNMDに関与していることを見出した。RUVBL1、RUVBL2は初期翻訳段階のmRNP(mRNAタンパク質複合体)と相互作用し、NMDにおいて異常mRNAを認識するmRNAサーベイランス複合体の形成を促進する。さらにRUVBL1、RUVBL2のいずれの機能阻害もNMDのレポーターmRNAを安定化する。これらの結果から、RUVBL1、RUVBL2はNMDにおけるSMG-1の機能複合体であるmRNA監視複合体の形成を制御することにより、NMDに必須の役割を果たしていることが明らかとなった。 上記の結果から、RUVBL1、RUVBL2がPIKKの量的制御およびNMDにおけるPIKK(SMG-1)の機能複合体の形成制御という2つのレベルでPIKKの機能を制御していることが明らかとなった。PIKKファミリーのタンパク質群はゲノム安定性と遺伝子発現の正確性を保障する役割を担っていることから、PIKKの共通の制御因子の発見は極めて重要な知見であり、ゲノムの維持や遺伝子発現全体の制御に、新しい局面をもたらす研究成果といえる。これらの研究成果はScience Signaling誌に掲載され、"Masters of integrity(無傷性の支配者)"として紹介された。
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Research Products
(3 results)