2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J11731
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
川鍋 陽 Nagoya Institute of Technology, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 生物物理 / ロドプシン / 膜タンパク質 / 光受容 / フォトクロミズム / 紫外・可視分光 / 赤外分光 / バイオ |
Research Abstract |
本研究では光センサーのはたらきをするロドプシン、Anabaena sensory rhodopsin(ASR)を対象にして、ロドプシンが機能を発現するための「タンパク質の構造変化」と、情報伝達タンパク質との相互作用を解明することを目的としている。本年度の研究成果の概要を以下に記述する。 1.ASRは2色を1つの分子で識別するフォトクロミックなセンサーであると提案されており、これに最適な光反応機構はall-trans型を光励起すると13-cis型が、また13-cis型を光励起するとall-trans型が生成する反応である。しかし、このようなフォトクロミック反応はこれまでの古細菌型ロドプシンの常識になかったため低温紫外可視分光法を用いてASRの光反応を詳細に解析した。その結果、驚くべきことにいずれも最初の光異性化反応後、100%の効率で他方の異性体に緩和することを見出した。ASRと既知の古細菌型ロドプシンのタンパク骨格はほぼ同じであるにも関わらず、光反応サイクルを示す他のロドプシンと異なり、ASRはその機能のため最適化されていることが明らかになった。これはタンパク質が進化の過程で機能に最適なシステムを巧みに獲得した結果と考えられる。本成果は化学誌の最高峰であるJACS誌に掲載された。 2.ASRは、膜タンパク質に情報伝達する他の古細菌型ロドプシンとは異なり、水溶性タンパク質に伝達すると考えられており、光受容後の構造変化が異なることが示唆されていた。そこで光反応初期過程で形成されるL中間体の低温赤外分光測定を行った結果、細胞質側の表面近くのGlu36(発色団レチナールからの距離-19.5Å)の構造変化が観測された。他の古細菌型ロドプシンでは、このような構造変化は観測されておらず、ASRの情報伝達機構に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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