2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J11731
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
川鍋 陽 Nagoya Institute of Technology, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 生物物理 / ロドプシン / 膜タンパク質 / 光受容 / フォトクロミズム / 紫外・可視分光 / 赤外分光 / バイオ |
Research Abstract |
本研究では光センサーのはたらきをするロドプシン、Anabaena sensory rhodopsin(ASR)を対象にして、ロドプシンが機能を発現するための「タンパク質の構造変化」と、情報伝達タンパク質との相互作用を解明することおよび新規機能の開発を目的としている。本年度の研究成果の概要を以下に記述する。 1.ASRは、膜タンパク質に情報伝達する他の古細菌型ロドプシンとは異なり、水溶性タンパク質に伝達すると考えられており、光受容後の構造変化が異なることが示唆されていた。そこで光反応初期過程で形成されるL中間体の低温赤外分光測定を行った結果、細胞質側の表面近くのGlu36(発色団レチナールからの距離19.5Å)の構造変化が観測された。他の古細菌型ロドプシンでは、このような構造変化は観測されておらず、ASRの情報伝達機構に重要な役割を果たしていることが示唆された。この成果はアメリカ化学会の雑誌Biochemistry誌に掲載された。 2.プロトンポンプ活性がないと報告されているASRをもとに、部位特異的変異を導入することでプロトンポンプ機能を持たせようと試みたが、未だに外向きのプロトンポンプ機能は実現してはいない。しかし、研究の過程で驚くべきことに細胞質側の、それもレチナールから15A以上も離れた部位を置換したにもかかわらず、ASRは通常とは逆の内向きのプロトンポンプに変換されたのである。ここから示唆されることは、バクテリオロドプシンとは異なるメカニズムでプロトンを輸送しており、かつポンプの方向を制御している部位が意外にもレチナールシッフ塩基から離れているのではないかということである。これら外向きと内向きのプロトンポンプを比較し共通点や相違点を探ることで、プロトンポンプのメカニズムに対して有用な知見を与えると期待される。
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