2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J11732
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
麻生 典 Keio University, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 先使用権 / 特許権 / 知的財産権 / 発明者権 / 発明権 / 工業所有権 / ドイツ / 衡平 |
Research Abstract |
現代社会においては、一個人で発明を完成させるということは不可能に近く、また、日本の下請会社の存在という産業構造に照らし合わせれば、先使用権の主体的範囲について明らかにしておくことが、我が国が押し進める知財立国、プロパテント政策にとっても非常に重要になる。我が国の通説のように、先使用権制度の趣旨が「公平」に求められるとしても、「公平」の概念は非常に曖昧であり、論者の主観が判断指標となっては先使用権の発生主体の法的安定性を害してしまう。 よって、先使用権制度の趣旨を再考し、そこでいわれる「公平」とは何かを明らかにした上で、先使用権は誰に発生し、発生後はどの範囲まで及ぶのかを、ドイツにおける議論を基に研究する必要がある。 本年度は、我が国の母法であるドイツ法の研究を中心に行った。ドイツにおいては、先使用権制度の趣旨が産業的占有状態の保護にあり、特許権者と先使用権者との公平にあるのではないことが明らかにされた。これにより、先使用権の主体的範囲に影響を及ぼす先使用権制度の趣旨の考え方の相違が明らかにされた点で重要な意義を有する。 また、発明者権と先使用権との関係もドイツ法研究により明らかにされた。発明者権と先使用権との関係が意識された背景には、先使用権の発生の前提として二重発明が必要であるという認識が存在し、その認識が覆されるとともに、発明者権と先使用権の関係が意識されなくなった。このような歴史的事実から、現在のドイツでは発明者権から先使用権を演繹しない。これにより、発明者権により先使用権を基礎づけることはできないとドイツにおいて考えられていることが明らかにされた点で重要な意義を有する。
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Research Products
(1 results)