2009 Fiscal Year Annual Research Report
粒子シミュレーションを用いた宇宙プラズマ中に発生する大規模渦についての研究
Project/Area Number |
07J11844
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
中村 琢磨 Japan Aerospace Exploration Agency, 宇宙科学研究本部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ケルビン・ヘルムホルツ渦 / 数値シミュレーション / 粒子シミュレーション / 磁気リコネクション / 速度勾配層 / 電子加速 / 非線形結合 / 水星磁気圏 |
Research Abstract |
本年度は、主に粒子シミュレーションを用いたケルビン・ヘルムホルツ(KH)渦についての研究を、「KH渦を発生させる速度勾配層における粒子効果」と「発生したKH渦における粒子効果」という2つの視点で行った。地球や水星などの惑星磁気圏と高速な太陽風の接する磁気圏境界領域には速度勾配層が形成さることが知られているが、非粘性な宇宙プラズマ中で速度勾配層がどのような機構で存在しうるのかまだ分かっていない。特に、水素イオンのラーマー半径が勾配層の厚さと同程度だと予想される小スケールな水星磁気圏境界では速度勾配層の構造は水素イオンに大きく左右される可能性がある。そこで、まず速度勾配層における粒子効果を粒子シミュレーションによって調べた。その結果、粒子スケールの速度勾配層の構造は粒子のラーマー直径が厚みの下限値になることを発見した。さらに、このラーマー直径は速度勾配を形成する対流が生む対流電場に依存して変化することから、対流の方向がと粒子のラーマー運動の方向が一致する場合と逆向きになる場合で速度勾配層の下限値が変化することを発見した。つまり、水星のような粒子スケールの磁気圏境界では、朝側に発生するKH渦の方が夕側より大きく・ゆっくりと成長することになる。次に、速度勾配層より発生するKH渦の構造を粒子シミュレーションによって調べた。その結果、磁気エネルギーの解放によって粒子(主に質量の軽い電子)がどのように、またどの程度加速するのかを定量的に見積もることに成功した。この結果は、ESAの地球磁気圏観測衛星Clusterが地球磁気圏境界に発生するKH渦内部に発生する磁気リコネクションの兆候を捉えた際に見つかった高エネルギー電子群の持つエネルギーとおおむね一致している。
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