2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J11917
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
寺澤 悠理 Keio University, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 社会的状況 / 身体 / 自律神経反応 / 情動 / 予測 / 記憶 |
Research Abstract |
本研究では社会的状況において他者との円滑な相互作用の実現を支持する情動を、社会的情動という枠組みで捉え、その認知・脳・身体を介したメカニズムを理解することを目的としている。これに基づき、本年度は以下の3つの研究を行った。(1)経験を手がかりとした他者の心的状態の予測と理解の認知過程に関する研究、(2)脳損傷例を対象にした(1)に関与する神経基盤についての研究、(3)情動の喚起を伴う記憶のメカニズムに関する研究。 (1)では健常者を対象に、顔刺激の視線の向きと表情からある状況に対する他者の心的状態を学習する課題と,統制条件として不等号の向きと大きさを操作した学習課題を実施し、テスト時のパフォーマンスと,SCR(皮膚コンダクタンス反応)を記録した。この結果,社会的文脈を使用した条件のみで,予測と一致した心的状態を表す刺激が提示された際に、SCRの増大が観察された。変化しやすい他者の心的状態に関する予測と現実との比較を潜在的かつ瞬時に行うために身体の変化と受容が伴っていたと考えられる。 (2)では予測に基づく注意の制御、環境の変化への気づきとこれらに関連する自律神経反応の調整への関与している右前頭葉背外側部の損傷例に対して、(1)と同様の課題を実施した。彼らにおいては状況を手がかりとした他者の心的状態に関する学習・予測の成立、及び、健常者で見られた予測と一致した刺激に対するSCRの増大も観察されなかった。よって、(1)で示された社会的文脈を用いた課題の遂行と自律神経反応の関係は、密接でありその中枢神経基盤の一つとして右前頭葉背外側部の関与が示唆された。 (3)は遂行中であるが、情動を喚起する画像の偶発学習課題を脳損傷例を対象に実施し、学習・再認時の自律神経反応と再認成績、及び、脳損傷部位との関連について検討を行っている。 本研究の目的を達成するために、以上の結果を踏まえ、来年度も研究の継続及び、新規の研究を実施する。
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Research Products
(4 results)