2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J11917
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
寺澤 悠理 Keio University, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 感情 / 自律神経反応 / 記憶 / 表情 / 島皮質 / 前頭葉腹側部 / fMRI / 神経心理学 |
Research Abstract |
本研究では社会的状況において他者との円滑な相互作用の実現を支持する情動を、社会的情動という枠組みで捉え、その認知・脳・身体を介したメカニズムを理解することを目的とした。この目的に基き、本年度は3つの研究を行った。1:脳損傷例を対象にした表情および感情的強度の判断に関する研究、2:脳損傷例を対象にした情動の喚起を伴う記憶のメカニズムに関する研究、3:自身の身体状態と感情状態を意識するときに特殊あるいは共通の神経基盤を探るfMRI研究。 1では、自身の身体内部から生じる感覚と、感情経験において重要な機能を担う部位として注目されている島皮質の損傷例を中心に研究を行った。右島皮質に限局的な損傷を持つ症例を対象に,表情判断および,表わしている感情の強さの評価課題を実施した。怒りや嫌悪といったネガティブ表情については識別能力の低下が観察され,表情が表わす感情の強さを低く評価する傾向にあった。本研究の結果は,右島皮質が特殊な感情の認識にとどまらず,主観的に経験する感情の強さを調整し,感情の正確な識別に重要な役割を担っていることを示唆している。 2は、1は昨年度から継続している研究で、情動を喚起する画像の偶発学習課題を脳損傷例を対象に実施し、学習・再認時の自律神経反応と再認成績、及び、脳損傷部位との関連について検討を行った。本年度は、腹側部損傷例、および他脳部位損傷例の症例数を増やし、引き続き検討をおこなった。以前から指摘されている前頭葉腹側部の情動の喚起における重要性を確認するとともに、環境と自身の身体反応、感情状態の不調が後の記憶成績にも影響を及ぼすという知見が得られた。脳損傷例を対象とした研究では、彼らの日常生活に関する報告や観察と併せて、感情の障害として見られる変化が彼らの社会生活をどのように変化させるのかを検討することができた。
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Research Products
(8 results)