2008 Fiscal Year Annual Research Report
音楽認知過程の普遍的特性の解明とそれを基盤とした神経回路網モデルの提案
Project/Area Number |
07J11927
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
松永 理恵 Hokkaido University of Education, 教育学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 音楽の認知 / 調性的体制化 / 調性スキーマの獲得 / 普遍的特徴と文化特殊的特徴 / 神経回路網モデル |
Research Abstract |
研究代表者は、「音楽認知過程の普遍的特性の解明とそれを基盤とした神経回路網モデルの提案」を達成するため、具体的には次の2つの課題に取り組んでいる。以下では、各課題の研究成果を個別に記す。 【課題1】調性的体制化の処理の基本的性質の解明:西洋音楽の聞き手は、メロディの構成音高のフルセットを全音階の音階音として解釈できる調に知覚しようとすることが知られている。研究代表者のこれまでの研究により、音高フルセットが同じでも音高の系列順序が変われば知覚される調が変わることから音高フルセットのみが手がかりではないこと、だが先行諸研究の提案する局所的特徴が二次的な手がかりとなる可能性は極めて低いことが示された。今年度の研究では、同じ音高フルセットとなる最終段階での異なる調知覚がどのような経過を経て分岐したのか、最終音段階以前の各入力音高の段階に遡って調知覚の遷移を調べた。その結果は、調の知覚は各時点の入力音高のセットに大きく規定されており、より多くの音高を知覚的により安定した音階音の解釈ができる調を好むこと、先行段階の調解釈からの影響も受けること、を示すものであった。要するに、先行研究の提案する音高フルセットよりも、研究代表者の提案する音列の進行に伴う"音高セットの変化"を、調知覚の手がかりと考えることで、より良く聞き手の調知覚を説明できるわけである。 【課題2】調性スキーマの普遍的特性と文化特殊的特性の解明:人間にとって、生得的制約と関連した特定の条件を満たす音楽は容易に学習できると考えられるが、その特定の条件とはどのようなものなのであろうか。研究代表者は、音楽知覚の基盤の1つといえる音階スキーマに焦点を当て、小泉文夫らによって音楽の普遍的な特徴であると指摘されてきた「完全4度枠」を含む音階に学習の優位性が見られるかどうかを検討した。何条件かの人工音階を設定し、それぞれの音階から旋律群を作成し、それらの聴取から被験者に音階を学習させたところ、4度枠を有する音階はそうでない音階よりも学習が容易になされやすい結果が示された。
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Research Products
(9 results)