2007 Fiscal Year Annual Research Report
動作の時系列的階層構造の認知とその脳内機構の比較研究
Project/Area Number |
07J12006
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山本 絵里子 Keio University, 社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | バイオロジカルモーション / 見本合わせ課題 / ハト / Pair-wise-stimulusパラダイム / 不応現象 / fMRI |
Research Abstract |
本研究では、ヒトとトリにおいて時系列的な階層構造をもつ動作の認知に関与する脳内機構を検証するために、ハトの行動実験、及び、ヒトのfMRI研究を行なった。ハトの行動実験では、ハトがバイオロジカルモーション(BM)刺激を実際の動画と対応づけて処理するかどうかを、見本合わせ課題により検討している。現時点では、ハトが刺激間の関係性を学習することを目的とし、刺激に静止画を用いて訓練を行なっている。本研究は、動物のBMの認知を検証することで、動作の認知における進化的な収斂・放散に関する視点を提供できると考えられる。 fMRI研究1では、運動視覚領野(MT野)で引き起こされるBOLD信号の不応現象が、動作の認知に関わる脳部位のBOLD信号に影響を与える可能性があるため、本実験ではPair-wise-stimulus(PWS)パラダイムと単一光点の運動刺激を用いて、MT野のBOLD信号の不応現象を検討した。実験の結果、被験者が、刺激間間隔200msにおいて、横運動刺激を2回連続的に知覚したときに、MT野のBOLD信号に不応現象が確認され、横運動刺激と縦運動刺激を連続的に知覚したときに、MT野のBOLD信号が増加した。結果から、MT野に横運動刺激、及び、縦運動刺激に選択的に反応を示すニューロンが存在する可能性を示した。fMRI研究2では、単一動作(歩行運動)のBM刺激の知覚時に、特定の脳部位における不応現象を検討した。実験の結果、被験者が、刺激間間隔1000msでBM刺激を2回連続的に知覚したとき、上側頭溝・回のBOLD信号に不応現象が生じ、BM刺激、及び、スクランブルモーション(SM)刺激を連続して知覚したときに、上側頭溝・回のBOLD信号に増加がみられた。結果は、上側頭溝・回にBM刺激、及び、SM刺激に選択的に反応を示すニューロンが存在する可能性を示した。本研究は、BMの知覚処理に関与する脳部位を不応現象の指標から解明した点で重要であり、高次知覚処理におけるPWSパラダイムの有用性を証明した点で大変意義深いものと考える。
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