2007 Fiscal Year Annual Research Report
貧酸素海域の環境特性を考慮した酸素収支モデルの構築
Project/Area Number |
07J12045
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
遠藤 徹 Osaka City University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 港湾海域 / 底層貧酸素化 / 底泥酸素消費 / 密度成層 |
Research Abstract |
港湾海域は,安定した密度成層構造を有する夏季になると慢性的な貧酸素状態に陥っている.本研究は,貧酸素化改善技術による溶存酸素環境の改善効果を予測するために,貧酸素海域における酸素動態について検討するものである.本年度は,貧酸素化した海域における底泥の酸素消費特性を把握するために現地調査を実施した.底泥の酸素消費速度の現場測定法であるチャンバー法は,海底に設置したチャンバー内のDO(溶存酸素)濃度の減少量から底泥の酸素消費速度を測定する方法であるが,本研究が対象とする貧酸素海域では底層にDOがほとんど存在していないため,上記のチャンバー法をそのまま用いることができない.そこで,本研究では,チャンバーを海底に設置した後に,予め採水して曝気しておいた底層水をチャンバー内の無酸素水と交換することで貧酸素海域でも底泥の酸素消費を測定することができるようなチャンバー法を開発した.調査は,開発した酸素消費測定装置を用いて大阪湾湾奥部の大和川河口域に位置する堺泉北港北泊地にて,貧酸素化が顕著となる2007年8月から貧酸素化が緩和する11月までの毎小潮時に実施した.これまで,底泥の酸素消費速度は海底堆積物中に存在する生物による酸素消費が支配的と考えられていたため底泥の酸素消費速度は時間的に変化しない一定速度として評価されていた.しかし,本調査結果によると,嫌気的環境下における底泥の酸素消費速度は時間的に変化することが明らかとなった.そして,この時間変化は直上のDO濃度に依存する1次反応式で表現でき,貧酸素化海域における底泥の支配的な酸素消費要因は,海底堆積物中に存在する還元物質の酸化反応によるものと考えた.このことから,貧酸素海域に酸素供給を想定した場合,その酸素動態を正確に予測するためには,底泥の酸素消費を生物的な要因のみでなく,底泥が潜在的に有する化学的な要因を評価しなければならないということが明らかとなった.
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Research Products
(8 results)