2007 Fiscal Year Annual Research Report
南アジア古代絵画の伝播と変容-アジャンターからティヴァンカまで-
Project/Area Number |
07J12973
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
福山 泰子 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 特別研究員PD
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Keywords | 壁画 / スリランカ / アヌラーダプラ / ポロンナールワ / アーンドラ / アジャンター / ピタルコーラー / ティヴァンカ |
Research Abstract |
本年度は、アジャンター壁画をはじめ、南インド古代中世絵画、スリランカのアヌラーダプラ時代・ポロンナールワ時代を対象に、各地域・時代の遺例の調査・写真撮影と文献の資料収集、さらに歴史文献の精査を行った。各考古局および大学機関(Deccan College-Postgraduate and Research Institute,Pune/Kelanya University,Sri Lanka)の助力により調査を実施し、また三脚を用いた写真撮影を行い、考古局や先学による報告者や論文、書籍等も収集した。また、ポスト・アジャンターの遺例ピタルコーラー石窟やカンヘーリー石窟、エローラ石窟についても調査し、前者においては様式的変化と図像にみる南インド、アーンドラ美術の伝統とアジャンターの影響を受けた新しい図像の折衷の様相を明らかにした。また、スリランカの仏教寺院構造や美術様式にも影響を及ぼしたアーンドラ地方の初期仏教遺跡および博物館の調査と平行して、未見の中世絵画の遺例も調査した。特に、スリランカ美術の研究では、マヒヤンガナ壁画におけるシヴァやヴィシュヌなどヒンドゥー尊像が仏陀(舎利)を礼拝守護する図様が見られ、インド・チョーラ朝文化が浸透し、ヒンドゥー文化と伝統的スリランカ仏教とのシンクレティズムの様相が明らかとなった。このことは寺院建築においても同様で、南インド様式を呈する仏教寺院ナーランダー寺院においても顕著である。また、仏教史学の分野では、森祖道氏の研究も参考にしつつ、歴史文献にみる遺跡や壁画に関する記述を抜粋し、現在もその作業は進行中である。この他、アジャンター研究の成果も論文として発表し、「壁画主題と配置にみる仏教寺院の空間概念」と題してアジャンターに加え、ティヴァンカ壁画も比較作例として提示し、仏殿空間と説話主題の伝統と構図の普遍性について発表した。
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Research Products
(4 results)