2008 Fiscal Year Annual Research Report
生体ナノ分子の機能性と分子間相互作用形態および溶媒によって誘発される駆動力
Project/Area Number |
07J12993
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
岡 敏子 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 水素結合性液体 / 緩和現象 / 核磁気共鳴法 / 動的感受率 / 分子ダイナミクス / 回転相関時間 / 誘電分光 / 記憶関数 |
Research Abstract |
水素結合液体に対しこれまで系統的に行われてきた誘電分光研究において、アルコールの誘電スペクトルに主要なデバイ型緩和(協同緩和)の高周波成分は、2つの緩和過程として分離可能であり、低周波側から単分子回転や回転拡散、分子内回転などの分子運動に帰属されてきた。本研究においては、水の誘電スペクトルに対して一般化ランジュヴァン方程式を用いた統計論的解析法を適用することにより、水分子の協同回転に作用するミクロな静電的摩擦力(=誘電摩擦)の記憶関数を実験的に求めることに初めて成功した。本手法を水素結合液体の例として一価アルコール(メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール)に順次適用した。これらの結果は、誘電スペクトルに主要な寄与として現れる協同緩和と、高周波領域に現れる微視的な過程との相関を説明可能な理論的枠組みの基礎となったと言える。 特定の分子運動の緩和時間の抽出のためには、適当な同位体ラベルと核磁気緩和の測定を組み合わせることが有用である。上記の誘電スペクトルの高周波成分がどのような分子ダイナミクスを反映しているのか明らかにするため、NMR法を用い、^<17>O-^1H間の磁気双極子-双極子相互作用による^1Hの核磁気緩和を観測することによって、アルコール分子のOH基の回転相関時間を実験的に求めることを目標とした。^<17>O濃縮水(^1H_2^<17>O)を用いて酸素-17ラベルしたアルコールの合成を試みた。(1)よう化メチル及びよう化エチルに酸化銀と^1H_2^<17>Oを加え反応させた。これと平行して、(2)HClの存在下でtri-n-butyl orthoformateと^1H_2^<17>Oを反応させ、得られたbutyl formateをLiAlH_4によって還元する方法を試みた。しかしながら、両方法ともに量及び純度において不十分であったため測定には至っていない。現在、合成手法を検討中である。
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Research Products
(1 results)