Research Abstract |
1.造礁骨格生物が大繁栄する以前の「オルドビス紀前期生物礁の構築様式」,2.造礁骨格生物が大繁栄した「古生代中期の礁成石灰岩の構築様式」について今年度は重点的に検討した. 1.南中国安徽省東至,貴州省桐梓地域に分布する紅花園層(Late Tremadocian-Early Floian)を検討した.両礁は,lithistid sponge, Calathiumの造礁骨格生物,石灰質微生物類Girvanella,大量のミクライトによって構成される.これらは,造礁骨格生物を含むが,微生物類による代謝活動,lithistid spongeの分解に起因するミクライトが,礁の枠組み構築に量的,本質的に重要であることがわかった.これらの特徴は,当時,赤道域に分布していた他地域の礁の特徴とも酷似しており,「オルドビス紀前期に典型的な礁の特性」を反映していることが明らかになった.上記研究を受けて,湖北省宜昌地域に分布する紅花園層,および分郷層(Late Tremadocian)の現地調査をおこなった.本検討により,紅花園層中の礁の「空間分布」と「特性変化」を明らかにすることが可能である.また,分郷層からは,世界に先駆けてコケムシが出現し,既に礁の構築に関与していたことが明らかとなった,オルドビス紀における骨格生物礁の多様化について生態的,時代的意義を解明する上で極めて有用なデータを得ることができた. 2.古生代中期(デボン紀前期)の「礁成石灰岩の形成履歴」を明らかにするために,「造礁骨格生物と微生物類間の相互関係」,および「生物相と環境変化との対応」を解析した.礁成石灰岩には,骨格生物と微生物が累積する階層構造が認められ,卓越する生物相が,生息場の環境変遷に応答して順次変化することで礁成石灰岩が形成されたことがわかった.礁成石灰岩は,造礁骨格生物と微生物類の「永続的な相互関係」の結果産物であり,その関係が礁の様々な時間スケールの中に記録されていることも明らかとなった.
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