Research Abstract |
本年度は,中国湖北省に分布する下部オルドビス系礁成石灰岩(南津関層,分郷層,紅花園層)に関する野外地質調査をおこない,堆積層序,岩相,生物相,年代を明確にした.さらに,分郷層,紅花園層中の生物礁の野外での産状,スラブ,薄片観察に基づいて,1)lithistid海綿-微生物礁,2)コケムシ-lithistid海綿-微生物礁,3)有柄類-コケムシ礁の「生物礁のタイプ」を識別し,「各生物礁の構築様式」を明らかにした.特に,2),3)のタイプは,コケムシが関与した最古の生物礁である点で注目される.さらに,今回の研究で識別されたこれらの礁のタイプは,オルドビス紀前期に生じた「微生物が豊富な礁の構築」から「骨格生物が豊富な礁の構築」へのまさに大転換を反映していることが明らかとなった.すなわち,「lithistid海綿-微生物礁」は,微生物が豊富な礁の残存に位置づけられる.一方,「有柄類-コケムシ礁」は,オルドビス紀中後期以降の骨格生物が豊富な礁の起源に相当する.これら「生物礁の大転換」は,カンブリア紀からオルドビス紀前期に生じた「底質の変化(生物擾乱,生砕物の増加・多様化等)」に影響を受けた,「底生骨格生物(コケムシ,有柄類等)の新たな底質への適応」と密接に関係していることを今回新たに提示した.本結果は,「礁生態系の初期創出過程」,「その後の後生動物礁の繁栄のメカニズム」を明らかにするための極めて有用なデータでもある. 以上の成果は,2008年日本地質学会学術大会(秋田),2009年日本古生物学会例会(沖縄)等で学会発表するとともに,両学会で優秀ポスター賞を受賞した.さらに,これらの成果は,複数の論文として国際学術誌に公表,投稿中である.
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