2008 Fiscal Year Annual Research Report
肝再生ならびに肝疾患時におけるビトロネクチンの糖鎖構造変化と組織修復の調節
Project/Area Number |
07J12995
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
佐野 琴音 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 特別研究員PD
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Keywords | 糖鎖 / 組織再生 / 肝再生 / ビトロネクチン / オリゴシアル酸 / 組織溶解 / 肝星細胞 / フィブロネクチン |
Research Abstract |
肝再生時に産生されるビトロネクチン(VN)の糖鎖構造変化に伴う分子の高次構造変化が、細胞接着伸展活性や細胞周囲での局所的溶解反応に及ぼす影響を明らかにした。 非手術(NO)、シャム手術(SH)、または部分肝切除手術から24時間後(PH)のラット血漿からVNを精製した。VNのGlu-C消化糖ペプチドをLC/MS^n解析した結果、VNと同様に肝臓で主に産生されるフィブロネクチンには見られない混成型糖鎖を含む部位特異的なN-型糖鎖付加と、タンデムなオリゴシアル酸構造を持つO-型糖鎖の存在を見出した。このオリゴシアル酸糖鎖がPH-VNで著しく減少することにより、分子の等電点が大きく塩基性シフトすることを見出した。これらのVN糖鎖変化か細胞接着に及ぼす影響を探るため、肝炎症時に活性化して細胞外マトリックスを産生する肝星細胞(RSC)を用いて細胞接着伸展活性測定とシグナル伝達活性測定を行った。その結果、NO-,SH-VNを基質とする場合と比較してPH-VN上での伸展が50%減少し、細胞内のFocal adhesion kinaseのチロシンリン酸化レベルが約60%に低下することを見出した。またノイラミニダーゼ処理VN上でも同様にRSC伸展が激減したことから、VN糖鎖中のシアル酸がRSCのインテグリン仲介性接着伸展に寄与することが示された。またVNと1型プラスミノゲン活性化因子阻害因子(PAI-1)の共存下におけるウロキナーゼ(uPA)有効活性はPH-VNで増加したが、さらに部分肝切除手術72時間後の血漿中のプラスミン活性はRSC存在下で著しく増強されることを見出した。これはRSC表面に存在するuPA受容体へのVNの結合活性の増強により、局所的な溶解反応が促進されるためと考えられた。VNの糖鎖変化による組織修復の調節機構を解明することは、正常な修復または線維化進展の制御に繋がると考えられる。
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