2007 Fiscal Year Annual Research Report
初期語彙発達における母語音声・音韻体系獲得過程の実証的検討
Project/Area Number |
07J13034
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Research Institution | NTT Communication Science Laboratories |
Principal Investigator |
石塚 綾子 (麦谷 綾子) NTT Communication Science Laboratories, 科学基礎研究所・協創情報研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 乳児 / 音声知覚 / 語彙獲得 / 日本語 / アクセント / 促音 / 長母音 |
Research Abstract |
従来の乳児音声言語獲得研究の多くは、音声弁別の可否に注目し、音声知覚が母語に特化する過程を明らかにしてきた。しかし、母語の音声・音韻体系は、母語特有の音声特徴や音韻が実際の語彙構築に反映されることで初めて、獲得されたといえる。促音を例にとると、日本語獲得においては単に促音を弁別するだけでなく、促音の有無のみで同定される音形(「トキ」「トッキ」)をそれぞれ、異なる指示対象(「時」「突起」)に結びつけ、語彙として獲得する必要がある。 本研究ではこのような語彙獲得の枠組みから、母語の音声・音韻体系の獲得を検証することを目的とし、約300名の乳児を対象に馴化脱馴化法を用いた実験を行った。その結果、対象とした三種の日本語音声要素(アクセント型、促音、長母音)の知覚、及びこれらの要素を用いた語彙獲得について、以下の知見を得た。 (1)アクセント型の違いを完全に知覚できるようになるのは18ケ月齢であった。また、14ケ月齢ではアクセント型を用いた語彙獲得は困難であり、18ケ月齢で語彙獲得が可能になった。 (2)促音と非促音の弁別は12ケ月齢で可能であるが、促音を用いた語彙獲得は14、18、22ケ月齢全ての月齢で困難であった。 (3)長短母音は10ケ月齢の時点で弁別可能であるが、母音長を用いた語彙獲得は14ケ月及び18ケ月齢ともに困難であった。 したがって、促音と長母音については、その知覚が可能になる時期に比べ、語彙獲得が可能になる時期はかなり遅れることが示された。あわせて、アクセント型、促音、長母音を用いた語彙獲得は、自立拍に比べて困難であることも示された。本研究は、語彙獲得という新しい枠組みを導入して母語音声・音韻体系の獲得過程を検討した点、さらにこれまで未解明であった日本語特有の音声要素の詳細な知覚発達・語彙獲得過程を明らかにした点に、大きな意義がある。
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Research Products
(4 results)