2007 Fiscal Year Annual Research Report
ポリアミンを指標にした腸内微生物群制御による腸内環境コントロール
Project/Area Number |
07J13037
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
栗原 新 The Institute of Physical and Chemical Research, 微生物材料開発室, 特別研究員(PD)
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Keywords | 腸内細菌 / ポリアミン / インポーター / 大腸菌 / 遊走 |
Research Abstract |
ポリアミン(PA)は分子内にアミノ基を二つ以上もつ塩基性物質で、プトレッシン(Put)、スペルミジン(Spd)、スペルミンが存在する。PAは、核酸、タンパク質などと相互作用することにより、生体内で様々な働きをする生理活性物質である。大腸内においてPAは、腸管バリア機能を高めることによって、粘膜を通した異物や病原菌の侵入とそれに伴う炎症を抑制している。食物由来のPAはそのほとんどが小腸で吸収されるため、大腸内で数百μMのオーダーで存在するPAのほとんどは、腸内細菌由来であると考えられる。ヒト大腸内には、千種類以上の腸内細菌が群集を形成しており、PAを腸管から細菌細胞へ吸収、もしくは、細菌細胞から腸管へ放出していると考えられる。この平衡を放出側へ移動させることが、腸管内で高PA状態を実現し、健康への寄与へとつながると考えられる。本研究では、遺伝子操作が容易な大腸菌のPAインポーターに注目して実験を行った。大腸菌は4つの同定済みPAインポーターを持ち、そのそれぞれが環境条件に応じて発現調節を受けていると考えられる。そこで、ヒト大腸内の環境を再現する目的で、嫌気条件下での糞便培養を用いた。この培養条件において、SpdインポーターであるPotABCDが糞便中からSpdを吸収する際に機能していることが明らかとなった。また、Putについては、同定されているPutインポーターそれぞれがある程度機能したが、その中でもPuuPが最もよく機能していることが示唆された。しかし、これらの結果は培養に用いた糞便の違いによってばらつきが大きいことも明らかとなった。この研究の過程で、大腸菌が固形培地上を活発に移動する現象である「遊走」に、Spdが細胞間シグナルとして重要な役割を果たしており、SpdインポーターであるPotABCDがこのシグナルを受け取る際に重要な役割を果たしていることが発見された。
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