2008 Fiscal Year Annual Research Report
イネいもち病菌エフェクター遺伝子の多型解析による病原性獲得進化機構の解明
Project/Area Number |
07J13042
|
Research Institution | Iwate Biotechnology Research Center |
Principal Investigator |
吉田 健太郎 Iwate Biotechnology Research Center, 生命科学研究部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 集団遺伝 / 比較ゲノム / 植物病理 / いもち病 |
Research Abstract |
1.前年度までに、日本産いもち病菌Ina168菌株特異的領域1.68Mbから分泌タンパク質遺伝子316個を推定し、pex1-316と命名した。今年度、その中で、pex31が非病原力遺伝子AVR-Pik/AVR-Pikm/AVR-Pikpであることがわかった。いもち病菌23菌株のAVR-Pik、AVR-Pikm、AVR-Pikpの表現型とpex31の保有状況との間に弱い相関があることを発見した。更に23菌株のpex31塩基配列を決定したところ、5つの対立遺伝子を明らかにすることができた。そのうち一つの対立遺伝子をもつ菌株は、必ずAVR-Pik、AVR-Pikm、AVR-Pikp、非病原性の表現型であった。そこで、pex31を保有しない菌株にこの対立遺伝子を形質転換したところ、Pik、Pik-m、Pik-pをそれぞれもつイネ品種に感染できなくなった。よって、この対立遺伝子は、AVR-Pik、AVR-Pikm、AVR-Pikp3つの非病原力遺伝子としてはたらくことが明らかになった。 2.イネプロトプラストによる非病原力遺伝子によって誘導される過敏感細胞死(HR)を検出する方法を開発した。それによって、非病原力遺伝子産物単独でHRを誘導されるかどうか検証することが可能になった。AVR-Pik/AVR-Pikm/AVR-Pikpと前年度に同定したAVR-Pia、AVR-Piiの遺伝子産物だけで、HRがおこることがわかった。更に、これらの遺伝子産物がイネの細胞内ではたらいることを示唆する結果がえられた。 3.ゲノム解析より、イネいもち病菌の分泌タンパク質遺伝子は、DNA変異によるものより、遺伝子の獲得と喪失によって進化しているものが多いことを明らかにした。更に、獲得と喪失によって進化している分泌タンパク質遺伝子は、近傍にトランスポゾンが存在している傾向があることがわかった。
|