2008 Fiscal Year Annual Research Report
試験管内再生系による中枢ミエリン形成のメカニズムの解析
Project/Area Number |
07J13115
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Research Institution | National Research Institute for Child Health and Development |
Principal Investigator |
宮本 幸 National Research Institute for Child Health and Development, 薬剤治療研究部, 共同研究員
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Keywords | オリゴデンドロサイト / ミエリン / 中枢神経 / 遊走 / 分化 / 神経細胞 / 共培養 |
Research Abstract |
ミエリン形成過程では、細胞同士、特にニューロンとグリア細胞の相互作用が非常に重要である。我々のグループ、これらの過程を形態学的に三過程に分類して考えている。すなわち、Stage I;軸索上でのオリゴデンドロサイトの遊走・増埴期、Stage II;オリゴデンドロサイトの突起が伸長し始める分化期、Stage III;軸索の周りに幾重もの層を形成していくミエリン形成(成熟)期、の三期である。このうち、Stage IIからIIIの初期の分化過程に関しては昨年度、ニューロンから分泌される液性因子がオリゴデンドロサイト上の受容体を活性化し、細胞内キナーゼの活性化から細胞骨格蛋白のリン酸化を介して、オリゴデンドロサイトの分化を促進している、という新規のシグナル伝達経路を報告した。 オリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖・遊走過程を制御する最も重要な液性因子の一つに、血小板由来増殖因子がある。はじめに、この血小板増殖因子が神経細胞から分泌され、パラクライン的にオリゴデンドロサイト前駆細胞の遊走を促進していることを明らかとした。次に、その詳細なシグナル伝達経路を調べたところ、活性化されたオリゴデンドロサイト前駆細胞上の血小板増殖因子受容体直下で、非受容体型チロシンキナーゼを活性化され、その後細胞内キナーゼの活性化から、細胞骨格系蛋白のリン酸化を経て、遊走促進に導かれていることが判明した。興味深いことに、この遊走経路の中心に介在する細胞内キナーゼは、分化促進経路上にある分子と共通である一方で、このキナーゼがリン酸化すう細胞骨格系蛋白に関しては異なるものを介することが分かった。 また、本研究で中心的な命題に掲げている、共培養系を用いた系に関しては、昨年度までにオリゴデンドロサイトと後根神経節ニューロンとの共培養系の構築に着手し、in vitroで部分的にミエリンが形成されることを確認している。本年度はミエリン形成効率を高めるため、異なる時期のラットから採取したオリゴデンドロサイト前駆細胞を用いたり、ミエリン形成の誘導時期や条件を変える、などの工夫を加え、引き続き検討を行っている。またこれらに加え、中枢神経の脱随疾患、なかでもPelizaeus-Merzbacher(PMD)病のin vitroモデルを構築すべく、準備を開始した。現在までのところ、PMD病の原因遺伝子であるPLPをオリゴデンドロサイト前駆細胞に導入し、オリゴデンドロサイトにおいて部分的なミエリン形成阻害を確認している。あわせて、その培養系を用いた薬物スクリーニング系も確立しつつある。次年度は、共培養系を用いた薬物スクリーニング系を確立し、脱随疾患の薬物治療への応用へと進めていく予定である。
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Research Products
(6 results)