2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J13186
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
星野 哲久 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 単分子磁石 / 単一次元鎖磁石 / 量子スピン系 |
Research Abstract |
本研究では、高いブロッキング温度を持つ単分子磁石を合成し、量子スピントンネリングについて検討を行うことを目的とした。新規シッフ塩基配位子H_2bmsaeを合成し、塩化鉄とメタノール中で反応させたところ、反応条件の最適化により5種類の多核錯体を得ることに成功した。このうち、Fe(II)7核錯体については、磁化率測定により基底状態でS=10の高いスピン多重度を持ち、単分子磁石に特徴的な性質を示すことを明らかにした。本研究はクラスター錯体の構造を反応条件で制御した数少ない例であり、より高いブロッキング温度の実現に繋がるものである。 また量子スピンのトンネル障壁について、単分子磁石以外の面からも検討を行っている。本研究では、大きなトンネル障壁を持つと予想されている反強磁性的な奇数員環状について検討を行った。安定な奇数員環であるβ-シクロデキストリンとバナジルイオンを反応させることで、バナジル7核環状錯体を合成した。現在磁気的性質について検討を行っている。これまで奇数員環状錯体の報告例は希少であり、奇数員環に特徴的な磁気的性質については、まだ報告例がない。 さらに本研究では単一次元鎖磁石にキラリティーを導入することで、量子スピン物性に留まらず、強磁性・強誘電を組み合わせた新しい物性について研究を行っている。キラリティーを持つ有機配位子(R)-pabnを塩化ニッケルと反応させ、鉄(III)トリシアノ錯体と反応させることで、Ni(II)-Fe(III)一次元錯体を合成した。磁化率測定の結果、この錯体が単一次元鎖磁石に特徴的な性質を示すことが明らかとなった。この錯体は、金属イオン中心の絶対構造がキラリティーを持つ、単一次元鎖磁石として初めてのものである。現在この錯体について、キラリティーと強磁性の複合物性について研究を行っている。
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