Research Abstract |
本研究では,環境ストレスの回避および応用が望まれる植物生産システムにおいて,植物の生体情報に基づく環境ストレスの回避や応用を行うことで,植物本来の潜在能力を引き出し,農作物の多収化および高付加価値化を達成することを目的とする. 1.環境ストレスの回避 栽培ベッドを吊り上げ,さらに上下動させることで,ハウス空間を立体的に活用できるダブルシーソー栽培システムにおいて,各栽培ベッドの光強度および光合成のモニタリング,さらに,収量調査を実施することで,弱光および強光ストレスの回避が可能な栽培ベッドの移動サイクルロジックを確立する. 2.環境ストレスの応用 水温を簡便かつ迅速に任意の温度で制御可能な水耕栽培システム(高付加価値野菜栽培システム)において,根圏への低温ストレスの条件(強度,時期,期間)を変えて付与した場合の植物反応を葉のガス交換,水分状態の測定,根の物質吸収機能の測定および抗酸化物質濃度の定量分析を行うことで評価し,低温ストレスに対する植物の適応機能の消長を明らかにするとともに,高付加価値野菜栽培の最適化を検討する. 初年度では,様々な植物生体計測法を駆使して,環境ストレスの検出法の確立を検討した. ダブルシーソー栽培システムにおいて,イチゴを材料に,各栽培ベッドの環境計測,光合成のモニタリングおよび収量調査を実施した結果,下段ベッドにおける弱光による収量低下,上段ベッドにおける強光による午後での光合成低下がみられ,下段および上段ベッドにおける弱光および強光ストレスを検出できた.また,高付加価値野菜栽培システムにおいて,ホウレンソウを材料に,根圏の低温ストレス下における植物反応を評価した結果,葉の光合成低下,根の物質吸収の低下,葉の浸透ポテンシャルの低下による膨圧の維持,さらに,糖,鉄および抗酸化物質の増加がみられ,低温ストレスに対する植物の適応機能を定量的に評価できた.
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