Research Abstract |
施設園芸における野菜の高収益生産(多収化,高付加価値化)をめざして,新規の栽培システムや栽培方法の導入による環境ストレスの回避と応用の方法論を提示し,その効果を植物の生理機能,生育,品質の観点から検証した. 1.環境ストレスの回避 栽培ベッドを吊り上げ,上下動させることで,ハウス内の空間および太陽光を立体的に活用できるダブルシーソー栽培システムをイチゴ栽培に導入し,強光および弱光ストレスの回避による多収化を検討した. 初年度では,上下2段で固定配置した栽培ベッドで,光環境,光合成測定および収量調査を実施した.その結果,上段ベッドでの強光ストレスによる極端な光合成低下と下段ベッドでの弱光ストレスによる光合成および収量の低下が確認され,慣行法の4倍の栽植密度にも関わらず,収量は2倍程度に留まった. 最終年度では,初年度の結果に基づいて,上段ベッドと下段ベッドの入替えによる強光および弱光ストレスの回避を検討した.栽培ベッドの入替えによって,上下段トータルの光合成量が増加し,3倍以上の収量を達成した. 2.環境ストレスの応用 水温を簡便かつ迅速に任意の温度で制御可能な水耕栽培システムを用いて,根域のみへの低温ストレス処理による葉菜の高付加価値化を検討した. 初年度では,植物生体計測(根の物質吸収,葉の水分状態,光合成)や内成分分析等を駆使することで,根域の低温ストレスに対する植物の防御機能(浸透圧調節機能,抗酸化機能)の発現を定量的に評価した. 最終年度では,初年度の結果に基づいて,根域への短期間の低温ストレス処理による高付加価値化を検討した.収穫直前に1週間だけ5℃の低温ストレスを付与することで,植物体にストレス防御機能が発現し,有用物質を高濃度に集積するとともに有害物質を低減した高付加価値なホウレンソウを生産できた. 以上,環境ストレスの回避と応用によって野菜の高収益生産を達成した.
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