2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J13386
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
桐谷 多恵子 Hosei University, 国際文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 原爆 / 被爆者 / 非被爆者 / 広島 / 長崎 / 復興 / 地域 / 原風景 |
Research Abstract |
研究の目的は、被爆後の広島・長崎両市の「復興政策」が広島・長崎の被爆者によってどのように認識されていたのかを、地方行政府、日本政府、アメリカ占領軍、国際環境という諸要因との関連の文脈において歴史的に考察することである。上記の研究目的に対する平成19年度の研究実績としては、広島市の復興に携わった行政府役員の個人史料より、戦後の生活の中で市民が広島市からどのような処遇を受けたのかを語る一次史料を取り上げ、青年運動との関わりから考察した。その結果、自らの命を省みずに被爆者の救済に立ち上がった初期の青年運動の取り組みとは相違した広島市の「復興」政策が浮かび上がり、被爆者の生活の建て直しを二義的にした「復興」が明らかとなった。一次史料を分析する中で、戦後広島の復興が如何にして被爆者の違和感の対象となる「復興」となっていったのかが立体的に浮かび上がった。長崎においても広島と同様に現地滞在を重ね、史料・聞き取り調査を行なった。広島と長崎は同じ被爆戦災都市でありながら、広島における「復興」と長崎における「復興」とは異なった面を持つと考えられる。広島は都心部を中心に市全体が壊滅状態となり、広島市という一つの地域の中で原爆の被害を受けた。これに対し長崎の被爆は、原爆投下の中心が、市の中央部から離れた浦上地域であったために、必ずしも長崎市全体の一つの原爆体験として共有されているとはいいきれない。また、原爆投下の地点が市の中心から離れた「浦上」であったという単なる地理的距離の問題以上に、長崎市は、歴史的、社会的な背景を持った地域的な問題、及び、二番目の被爆地としての時系列的な差異から生れる問題をも抱えていた。これら広島との差異を考慮しながら、長崎市政が行った爆心地附近への復興政策と被爆者への対応を考察した。青年運動の発起人を含む関係者に入念な面接調査を重ね、戦後長崎の青年運動の解明にも努めている。
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Research Products
(3 results)