Research Abstract |
同位体交換法による可給態Cd量(E値)測定法を確立し,以下の成果が得られた. 1.113Cdの混合に要する時間の決定;土壌に水を加え2日以上かきまぜた後,113Cdスパイク液添加後1分,4分,10分,40分,100分,400分,1日,4日,7日,15日後に土壌懸濁液を採取して液相を分離し,ICP-MSで測定した113Cd/114Cd比からE値を算出した.E値の実測値はスパイク液添加後1分から400分までの間に急激に上昇し,それ以降は緩やかに増加した.1〜100分の実測値を同位体交換速度式に適用してE値を計算したところ,実測値とよく一致したことから,100分程度の実測値から土壌E値を推定できる. 2.113Cd/114Cd比の測定精度;Cd濃度を異にする土壌懸濁液中のCd分析を行い,113Cd/114Cd比の測定精度を調べた.土壌液相中のCd濃度が0.5ng mL^<-1>,ならびに0.1ng mL^<-1>(非汚染土壌レベル)のときの113Cd/114Cd比の実測値は自然界値と概ね一致した.スパイク液添加後の土壌液相中の113Cd/114Cd比は10.6(1分後)〜3.9(15日後)の範囲にあり,それぞれの測定精度はRSDで5%以内(n=12)であり,E値を計算する上で十分な精度が得られた. 3.同位体比測定のための前処理法の検討;モリブデン(Mo)とズズ(Sn)の分光干渉の有無と程度を調べた.114Cdに対するSnの干渉は比較的小さく,計算で十分補正できたが,Moの干渉はpHの高い(6.5を越える)土壌で顕著であった.この問題を解決するために,「土壌懸濁液に共存する元素を利用した共沈分離法」を適用して,Cdに対する干渉がほとんど認められない程度までMoを除去することに成功した. 4.E値の測定;農業資材の施用が土壌のE値に及ぼす影響を調べた.下水汚泥を5年間連用した土壌のE値は対象区土壌のE値とほぼ一致し,5年間の汚泥連用は土壌の可給態Cd量の総量に影響しないことが示された.また,Cd汚染土壌に炭酸カルシウムを添加し,土壌pHの上昇がE値に及ぼす影響を調べた.土壌pHを中性付近まで上昇させても土壌のE値は変化しなかったが,スパイク液添加直後のE_<(t)>値が低くなったことから,同位体交換速度は作物のCd吸収を予測するための指標として利用可能である.
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