2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J45084
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
勝又 悦子 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | タルグム / ユダヤ教聖書解釈 / ラビ文献 / 聖書 / ピュート / 新約聖書 / 祭儀 |
Research Abstract |
初年度となる本年は、聖書解釈の諸相をとらえる軸となるタルグム(アラム語訳聖書)の読解を進めることが中心となった。モーセ五書の中でも創世記、出エジプト記、レビ記については、ほぼ全体にわたってテキスト読解が進み、タルグム間のシノシプスを用意している。さらに、タルグムにおいて長大な加筆がなされている個所については、ラビ文献での並行記事との比較考察を進めていった。創世記に多々見られる祝福に関連する場面(創世記12章、49章、50章1節)や、出エジプト記他での、天幕、テントについての記述、更に出エジプト記の十戒(出エジプト記20章、申命記6章)、またタルグム独自の祭儀用語について、詳細に考察した。その結果、並行箇所が見られるにしても、ラビ文献では、非常に通り一遍的な扱いを受けている解釈がタルグムに採用されるような例が見られた。特に、聖書の中でも主要な場面であろうと思われる十戒は、逆にラビ文献では非常に手薄な扱いを受け、解釈の中心も第1、2戒に置かれているのに対して、タルグムでは、十戒全体にわたり、手の込んだ装飾的な加筆がなされ、また、十戒の後半部分にも加筆の比重が置かれていることがわかった。また、十戒の区分も、ラビ文献とは必ずしも一致していない。これより、十戒が非常に重要な意味をもったユダヤ宗教詩文(ピュート)や、十戒後半部分にのみ引用される新約聖書等の文学を担う集団との思想的近似性が予想された。この件については同志社大学ユダヤ学会議にて発表、論文にまとめた。また、タルグムは独自の祭儀用語を有する。それらの用法の一貫性を考察中であるが、それより、タルグムが非常に聖俗の区別に敏感であることが予想されている。
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Research Products
(3 results)