2008 Fiscal Year Annual Research Report
近世東地中海経済史-ヴェネツィアとオスマン帝国の経済関係を軸に-
Project/Area Number |
07J45095
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
相馬 巳貴 (飯田 巳貴) Shinshu University, 教育学部, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 歴史 / 経済 / イタリア / オスマン帝国 / 近世 |
Research Abstract |
1.17世紀前半のオスマン帝国における繊維製品消費の実態と、同地におけるヴェネツィア製品の評価を考察するため、イスタンブルとブルサに関して作成された、公定価格台帳(ナルフ台帳)3点を分析した。同史料群には、日用品からいわゆる高級品まで様々な商品が記載されている。本研究では、繊維製品を、絹、毛、綿、麻の種類別に分類し、それをもとに各商品群の一覧表と産地の分布図を作成した。分布図をみると、絹製品は、最も地理的に広い国際的な分布が見られた。それに対し、毛織物の分布はやや西に移動し、一方で綿製品、麻製品はほぼアナトリア以東に限定されている。これら製品別の分布は、17世紀初頭と中葉でほぼ変化していない。その一方で、記載された絹織物製品の種類は時代が下がるにつれてより多くなっており、17世紀中葉にむかって、イスタンブルにおける奢侈品消費市場が成長していたことが示唆された。同史料群に記載されたヴェネツィア製品は、主に高級絹製品であり、台帳でかなり高い評価を得ている。さらに、ヴェネツィアと同様、もしくはそれ以上にフィレンツェ製高級絹製品が高い評価を得ていたことが判明した。オスマン帝国とフィレンツェ(トスカーナ大公国)の経済的関係はこれまでほとんど解明されていない。この点は、近世の地中海地域経済を、より包括的に考える上で、今後重要な課題となろう。 2.絹織物等の現物史料について、イタリア、トルコ、ギリシャで調査をおこなった。 1および2の研究成果は、2008年6月刊行のMediterranean World19号掲載論文、"The Textile Market in Istanbul and Bursa in the First Half of the Seventeenth Century:An Introduction"において発表された。
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Research Products
(1 results)