2008 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄・慶良間海域のサンゴメタ集団再生に向けて:保全・修復計画への数理的アプローチ
Project/Area Number |
07J45155
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
竹垣 草世香 (向 草世香) Kyushu University, 理学研究院, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 造礁サンゴ / 移植 / 多様性 / メタ群集 |
Research Abstract |
1998年のサンゴ白化現象により沖縄島周辺のサンゴ群集は壊滅的な打撃を受け、今なお回復はほとんどみられていない。そのため、サンゴの再生を促進する手段として移植が注目され、既に実施されている。しかし、不用意な移植は健全なサンゴ群集の自然再生を阻む恐れがあるため、移植種の選定には注意を要する。そこで、どのような種を、どのような空間スケールで、どの程度移植するのが良いのか、数理モデルを用いて検討した。 サンゴの動態は着底・成長空間依存モデル(Muko et al.2001)で与え、2つの生息地が浮遊幼生の交流によって結ばれるメタ群集を考えた。また、沖縄地方の主要なサンゴである、ミドリイシ科、ハナヤサイサンゴ科、ハマサンゴ科、キクメイシ科の加入率、成長率、生産率、に関するパラメータを文献から推定し、数値計算を行った。その結果、サンゴ被度を早く回復させるためにはミドリイシ科の移植が有効であることが明らかとなった。ただし、現在沖縄島周辺で局所絶滅の危機にあるハナヤサイ科の自然回復を妨げることが分かり、移植の実施には注意を要することが示唆された。また、多様性を高く維持するためにはハナヤサイサンゴ科、キクメイシ科の移植が適していることが明らかとなった。特に、一方の生息地へ集中的に移植を行った場合、メタ群集全体の平均多様度が高く維持された。移植群集が何らかの局所的攪乱により全滅する危険性はあるが、移植実施の労力やコストを低く抑えられるという点からも集中移植は有効だと考えられる。現在、これらの結果を学術論文としてまとめている最中であり、サンゴ礁科学専門誌に投稿予定である。 また、環境の空間変異と時間変動が多種共存に及ぼす影響についての理論的研究がJournal of Theoretical Biologyに掲載された。
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Research Products
(2 results)