2007 Fiscal Year Annual Research Report
固体中の量子輸送現象の非線形効果についての理論的研究
Project/Area Number |
07J52253
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉本 直之 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 相関電子系 / 金属絶縁体転移 / 非平衡グリーン関数法 |
Research Abstract |
本研究では、固体中の電子分布の電場応答の理論的研究を行った。特に、電場による金属絶縁体転移の理論的研究を、非平衡グリーン関数法を用い解析的、数値的に行った。また、バンド絶縁体を簡単な模型で近似し、電子相関を平均場近似で扱い相転移の仕組みを調べた。その結果以下の点が明らかになった。 1、電子相関の影響でバンドギャップが電流下で不安定になり、ある電場の値でギャップがつぶれ絶縁体から金属への転移が起こる。この、敷居値となる電場スケールは、今まで知られていたZener理論から与えられる電場スケールに比べ小さい。実験でZeenr理論より小さい電場での金属絶縁体転移が観測されているが、本研究結果はこの実験結果と理論との相違を解決する。 2、上述の通り、金属絶縁体転移には二つの電場スケールが現れる。この2つの電場の間に外場があるとき、バンドギャップの安定化解は二つ現れる。一つは金属に対応し、もうひとつは絶縁体に対応する。そのため、この電場領域では金属相と絶縁体相が共に安定な相となる。これは平衡理論での一次転移に相当する特徴であることから、電場による相関電子系の金属絶縁体転移は一次転移であることがわかった。 3,不純物効果を考慮すると、不純物順位がフェルミ面上にある時、共鳴トンネル効果が起き、これが金属絶縁体転移を誘発する。そのため、試料が一様に転移するのではなく、一次元的な金属相が部分的に生じることになる。 この解析結果は実験結果とも一致し、相関電子系の電子デバイスへの応用の指針になる結果である。
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Research Products
(5 results)