Research Abstract |
本研究は,木造密集市街地などの都市部の既存木造住宅の構造性能を定量的に評価することを目的とし,都市部の既存木造住宅の実態調査結果の検討,地震被害調査,構造要素の実物大実験等を行った. 研究の実施内容は以下のとおりである.(1)都市部の既存木造住宅の実態把握するため,東京都千代田区神田地区を対象に木造住宅の特徴について検討した.狭小間口の店舗併用型木造住宅が多く,この特徴を持つ木造住宅を対象に耐震診断と常時微動測定,当該地区の地盤を考慮した地震応答解析を実施し,地震災害に対する構造性能の把握を行った.解析対象とした4棟の木造住宅(築40から70年)のうち2003年に改修を行った木造住宅は,耐震診断結果,地震応答解析結果ともに安全側の結果が得られた.(2)都市部の木造住宅の地震被害の特徴を把握するために地震被害調査を行った.本研究では,2007年能登半島地震における被災地を対象とし,木造住宅の被害が多く認められた輪島市と七尾市にて悉皆調査と詳細調査を行った.特に,輪島市の木造住宅1棟を対象に,被害部位の詳細調査や常時微動測定,2007年地能登半島地震の観測波を用いた地震応答解析を行った.(3)実態調査,被害調査を踏まえて,木造接合部の実物大実験を実施した.狭小間口木造住宅において被害が多く生じていた柱-横架材接合部4種を対象とし,各3体の合計12体を用いた.破壊が生じる変形角まで加力を行い,耐力,破壊性状等の把握を行った. 木造密集市街地などの狭小間口既存木造住宅は,構造性能において問題を抱えている場合が多い.本研究では,実態調査から地震被害調査まで実施し,さらにこれらの木造住宅において破壊要因として重要である接合部要素の実物大実験を実施した.実際の地震被害を踏まえた上で,接合部の構造性能を体系的に把握し評価することは,今後既存木造住宅の耐震性能について検討する上で非常に重要である.
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