2007 Fiscal Year Annual Research Report
「アウシュヴィッツ以後」におけるユダヤ教とキリスト教の対話と相克
Project/Area Number |
07J53283
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
森山 徹 Doshisha University, 大学院・神学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アウシュヴィッツ以後 / 反ユダヤ主義 / ユダヤ教とキリスト教 |
Research Abstract |
第二次世界大戦下、ドイツのナチス政権は、ユダヤ人絶滅を政策として展開し、600万近くのユダヤ人の命を奪った。今日、この政策を強力に押し進める背景として、西洋のキリスト教文化が内包していた反ユダヤ主義が指摘されているが、これは現在も形を変えて、中東を初め世界中で政治的、宗教的問題を引き起こしている。研究者は、この反ユダヤ主義の温床となってきたキリスト教的反ユダヤ主義を当のキリスト教側から分析し、幾つかの克服の試みを探った。まず、ナチス政権を批判し、ユダヤ人排斥政策に強く反対したスイスの神学者カール・バルトの思想と行動を分析した。そこでは、元来キリスト教が、ユダヤ教を通して生まれたこと、そして今もなおユダヤ教の恩恵に与っているということが、バルトの反ユダヤ主義に対する抵抗の論理になっていることを明にした。次に、現在最も著名なドイツの神学者であるユルゲン・モルトマンを取りあげ、彼の反ユダヤ主義批判とその背景を探った。そこでは、ユダヤ人であったイエスをキリスト(救い主)として解釈したキリスト教の見解の前提には、ユダヤ教のイエス解釈(イエスをキリストとは見なさない)があり、このユダヤ教の見解を再確認することが、キリスト教が反ユダヤ主義を克服する上での最重要な課題である、ということを明らかにした。他方で、第二次大戦下において、ユダヤ人が存在しなかった日本でも、反ユダヤ主義が宣布されていたということ、そこに多くのキリスト教徒が関わっていた背景を明らかにした。このように、反ユダヤ主義が単に人種差別や排外主義的ナショナリズムの一側面として捉えられないということ、またキリスト教がこの原因の一端を担っているのと同時に、克服の一つの可能性をも有していることを明らかにした。
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Research Products
(3 results)