2007 Fiscal Year Annual Research Report
コバネヒョウタンナガカメムシの雄による付属腺物質を使った雌の再交尾抑制機構の解明
Project/Area Number |
07J54183
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
日室 千尋 Kyoto University, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 再交尾抑制戦術 / 再交尾抑制物質 / 軍拡競走 / 性的対立 / コバネヒョウタンナガカメムシ |
Research Abstract |
1. コバネヒョウタンナガカメムシTogo hemipterus雄は、付属腺に含まれている再交尾抑制物質を用いて雌の再交尾を抑制している。そのような戦術はキイロショウジョウバエ以外ではほとんど研究されておらず、またなぜそのような戦術を進化させたかの要因については未解明である。本研究では異なった戦術を採る他のカメムシ類と比較研究した結果、雌の特異な交尾器形態、産卵様式、交尾対形成時におけるコストの軽減の3点が進化を促した主な要因であると考察した。また、今年度は再交尾抑制物質の同定を進めたが、熱変性するという性質も関係し、アミノ酸配列決定までは至らなかった。現在新たな方策を用いて同定を進めている。 2. 雌の再交尾を巡っては雌雄問で利益が異なり、対立が生じることが知られている。そのような雌雄間での対立の中、軍拡競走において雄がリードしていると考えられている。本種は一般的に短翅で移動能力が低く、個体群間での遺伝子交流が少ないので、再交尾抑制物質を巡る雌雄間の対立の程度は個体群ごとで異なっていると考えられる。そこで、再交尾抑制物質を巡る雌雄間の軍拡競走は存在し、再交尾抑制物質に対する雌の反応は交尾した雄が同個体群由来か否かで異なるという仮説を立て、京都個体群雌を同個体群雄、異個体群雄(岡山個体群)それぞれと交尾させ、雌の不応期や寿命を調べた。結果、仮説通り京都雌は交尾した雄が同個体群か否かによって異なった反応を示した。また、逆に京都雄を岡山雌と交尾させ、雌の不応期を調べたところ、京都同士の結果に比べ有意に短くなった。以上から、軍拡競走のベクトルの方向、またはその強さが個体群間で異なっていることが明らかとなった。軍拡競走を検出した研究結果は現在のところ非常に少なく、雌雄間の対立における軍拡競走の検出は本研究が初めてである。
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