2008 Fiscal Year Annual Research Report
新奇な物性を有する物質の創製、および外場による機能制御
Project/Area Number |
07J55111
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
草本 哲郎 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | TEMPO / 金属錯体 / ジチオレン |
Research Abstract |
昨年に引き続き、tempodtからなる金属錯体の電子状態について検討を進めた。昨年の研究より、tempodtからなるPt錯体(tempodt)Ptは、特異な電子状態を形成していることが示唆された。ジチオレン錯体の電子状態は、その錯体が発現する物性と密接な関係があることから、この特異な電子状態をより詳細に調べることは新奇物性発現に大きく貢献することであると考えられる。このような観点から、この電子状態をより詳細に調べる実験(錯体の酸化反応をUVにより追跡する実験)を進めた結果、(1)tempodt配位子が金属イオンに配位することで、ジチオレン部位を中心とする電子状態が大きく変わること(=SOMO-HOMO level conversion)(2)その結果(tempodt)Ptが特異な電子状態を実現すること、を明らかにした。これは今まで報告例のない新奇現象である。私はこの研究をACS学会で報告し、また研究結果をまとめた論文はJACSに掲載された(10.研究発表参照)。 次の段階として、上記の特異な電子状態を新奇物性発現に応用することを目指し、新規錯体M(tempodt)_2^-を設計した。この錯体は高い電子供与性を有する平面π共役ジチオレン部位とTEMPOラジカル部位からなり、この錯体では一電子酸化によりジチオレン部位にπラジカルが生成することが予想される。このπラジカルとTEMPOラジカル間に相互作用が働けば、それが新奇物性発現の手がかりとなると考えられる。このような観点からM(tempodt)_2^-(M=Ni,Au)を合成し、その物性を調べたところ、Ni錯体において、πラジカルとTEMPOラジカル間に有効な交換相互作用が働いていることがESR測定より明らかとなった。前述のように、新奇物性を発現するためには、ジチオレン部位とTEMPO部位に有効な相互作用が働くことが重要であるが、この結果はまさに両部位間に相互作用が働いていることを示している。この研究成果を日本化学会春季年会にて報告した。現在はこれらの錯体の固体物性に焦点を当てて、新奇物性発現を目指して研究を進めている。
|
Research Products
(4 results)