2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J55131
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
魚川 祐司 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 仏教 / 玉城康四郎 / 死生学 / 鈴木大拙 / 宗密 |
Research Abstract |
昨年度は、故・玉城康四郎東京大学教授の業績を参考にしつつ、仏教研究の方法論について検討を行うことを主に行った。その成果が業績欄に示した論文・発表である。 玉城康四郎の仏教哲学は、自ら行体験を深めることによる「直接知の重視」、およびそこから帰結する「価値判断の積極的提示」という特徴を有しており、この点、現代の学者から批判の対象となっている。しかし、仏教を経典に記された「研究対象」としての「伝統思想」に止まるものではなくして、現代人の死生観を再構築する基盤の一つとなり、またその行動の指針ともなり得る「実践の哲学」として捉えかえそうとした場合、玉城の仏教解釈には再評価すべき点が多くある。そのような性質をもつ玉城の思想を、現代の学問的状況の中において如何にして有効な形で再解釈していくか、という検討を昨年度は行ってきた。これは、従来の近代仏教学においては採られてこなかった視点・立場をそこに新たに導入する橋頭保となった、という意味において重要であり、また、「死生観を再構築し、それに基づきつつ他者との共生を模索するという、現代的課題に応じ得る実践哲学を、具体的な方法とともに提示した」思想家である玉城の業績を、現代の学会に再提示したことは、一定の学問的意義をもったと考える。 なお、昨年度は上記と並行して中国禅に関する研究も進めており、研究計画書に記した宗密のテキストを中心としつつ、『祖堂集』や『景徳伝灯録』、また『臨済録』や『趙州録』といった灯史・語録を広く渉猟し、唐代禅の実相について検討を行った。その関係から鈴木大拙の未邦訳英語文献("Zenin T'ang and Sung"『唐宋禅宗史』)の翻訳を依頼されることになったが、これは作業がほぼ完了し、来年度に公刊される予定である。
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Research Products
(3 results)